若者の「理系離れ」に警鐘を鳴らす必要はないのか,学術


若者の「理系離れ」に警鐘を鳴らす必要はないのか

昨今の大学入試における文理選択の動向が報じられている。特に、国立大学の工学系学部において、「理系に進学した理由」を学生に尋ねたところ、半数以上が「他に興味のある分野がなかったから」と回答したというのだ。この結果を受けて、一部では「理系離れ」への懸念を表明する声も聞かれる。

しかし、我々はある種の安堵を覚える。なぜなら、この結果は、必ずしも日本の若者が科学技術への関心を失っていることを示すものではないからだ。むしろ、複雑化する社会の中で、将来のキャリアパスを模索する上で、普遍的な知識や論理的思考を養うことができる理系分野への進学は、一種の「安全策」として機能していると捉えることができる。

もちろん、将来の日本の科学技術を担う人材育成という観点からは、より積極的な動機付けがなされるべきであることは言うまでもない。しかし、現代社会において、特定の分野への強い情熱を持つこと自体が、むしろ少数派なのかもしれない。多くの若者は、不確実な未来を見据え、自らの可能性を広げるための選択をしているのである。

我々は、こうした若者の選択を頭ごなしに否定すべきではない。むしろ、彼らがどのような動機で理系分野に進学したのか、その背景にある社会情勢や価値観の変化を深く理解しようと努めるべきだろう。そして、彼らが理系分野で何を学び、どのように成長していくのか、温かく見守り、支援していくことが、将来の日本を創る上で不可欠な姿勢であると信じている。

確かに、理系離れを憂う声も理解できる。しかし、今こそ、我々は若者の多様な選択肢を尊重し、彼らが自らの道を見つけられるような社会環境を整備していくことに、もっと目を向けるべきではないか。


国立大学55工学系学部が「理系に進学した理由」を公開! ~未来を担う学生たちの声~,国立大学55工学系学部


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