グレートブリテンの新たな夜明け、あるいは灯火管制か
ロンドン発。かつて「太陽の沈まぬ帝国」と称えられたグレートブリテン島から、静かに、しかし確かな変革の気配が漂っている。国立大学協会（CVCP）が発表した、国内の大学における「全学的な公共エリアにおける照明の段階的段階的削減」に関する勧告は、単なる省エネ策を超えた、社会のあり方を問う象徴的な一歩と言えるだろう。
この勧告の裏側には、気候変動への危機感、そしてエネルギー資源の持続可能性への強い意志が透けて見える。しかし、我々が注目すべきは、その先にあるものだ。大学という知の象徴、未来を担う若者たちが集う学び舎が、率先して「暗闇」を受け入れようとしているという事実は、単なる効率化の議論に留まらない。それは、我々が当たり前として享受してきた「明るさ」という価値観そのものへの問い直しではないだろうか。
かつて夜を照らし出した数多の灯りは、産業革命以来、人類の進歩の象徴であった。眠らない都市、24時間稼働する社会。その光は、我々に利便性と効率性をもたらし、文明を飛躍的に発展させた。しかし、その「明るさ」は、同時に地球の資源を食い潰し、環境を汚染し、そして私たち自身の生活リズムさえも狂わせてきたのかもしれない。
今回の勧告は、そうした「明るさ」への依存から脱却し、新たな価値観を模索しようとする試みと解釈できる。夜のキャンパスに灯る僅かな光。そこでは、もしかしたら、これまで見過ごされてきた静寂、内省の時間、そして他者への配慮といった、新たな「輝き」が見出されるのかもしれない。あるいは、暗闇の中で互いの存在をより深く感じ取る、人間的な繋がりが生まれる可能性もある。
もちろん、懸念もある。防犯上の問題、学習効率への影響、そして何よりも、多くの人々にとって「暗闇」が持つ、不安や不便さといった負のイメージだ。しかし、変化には常にリスクが伴う。我々は、この「灯火管制」が、単なるコスト削減や環境対策に終わるのではなく、社会全体の意識改革、そしてより持続可能なライフスタイルへの転換を促す触媒となることを期待したい。
グレートブリテンの静かなる変革は、私たちにも問いかけている。我々は、本当に「明るさ」だけを求めているのだろうか？ それとも、時には静寂と、そして適度な「暗闇」の中にこそ、真の豊かさを見出すことができるのだろうか。この試みが成功するかどうかは、大学関係者だけでなく、私たち一人ひとりの「光」に対する認識の変化にかかっている。
国立大学協会からのお知らせ：グレイトブリテン・ササカワ財団の助成金について,国立大学協会
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