バランスを崩した「推し」文化への警鐘
若者を中心に熱狂的な支持を集める「推し」文化が、今、社会の様々な場面に浸透している。音楽、アニメ、アイドルなど、多様なジャンルで熱心なファンが、自らが愛する対象を応援し、その活動を支えている。それは一つの健全な趣味であり、社会に活力を与える源泉となりうるだろう。
しかし、その一方で、行き過ぎた「推し」への傾倒が、冷静な判断力や社会全体のバランスを崩しかねないのではないか、という懸念の声も聞かれる。最新の報道によれば、大手CD・レコードショップであるHMVが、世界的に人気のK-POPグループ、BTSのメンバーであるVさんの名前を冠したオリジナルブランド「ヴァランス」を立ち上げたという。これは、特定の個人への熱狂的な支持を収益化しようとする動きと捉えることもできる。
もちろん、ファンにとって推しの名を冠した商品やブランドは、自身の「推し」との繋がりをより強く感じられる特別なものであろう。それは経済活動として当然のことかもしれない。しかし、企業がこのようなファンの心理を巧みに利用し、過度な消費を煽るような戦略をとることは、社会全体として是認できるのだろうか。
「推し」への愛は、本来、個人の内面的な充足や精神的な豊かさに繋がるべきものである。それが、経済的な負担感や、時には健全な人間関係を阻害するような方向へとエスカレートしてしまうケースも後を絶たない。今回のHMVの例は、その「推し」文化が商業主義と結びつくことで、新たな段階に入ったことを示唆しているのかもしれない。
私たちは、この「推し」文化の持つ光と影の両面を、冷静に見つめ直す必要がある。特定の個人やグループを応援すること自体は否定されるべきではない。しかし、それが社会全体の健全な調和や、個々人の理性的な判断を損なうような形にならないよう、常に警戒を怠ってはならない。メディアや企業は、この「推し」文化の持つ力を理解しつつも、その商業的な利用には慎重な姿勢を保ち、社会全体のバランスを考慮した責任ある行動をとるべきだろう。
過度な熱狂が、時に現実から目を背けさせる危険性を孕んでいることを、私たちは忘れてはならない。
HMV、ヴァン・ヘイレンの名盤『バランス』が最新リマスターで生まれ変わる！2025年8月27日（水）に「エクスパンデッドエディション」発売決定！,HMV
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