時代を映す「NOW」、懐かしさと未来への視座を求めて
今回のITBの記事で取り上げられたHMVが贈る「NOW」シリーズ、特に1997年をフィーチャーしたタイムスリップ企画には、思わず心躍るものがあった。かつて、CDショップのフロアに立ち、最新の音楽トレンドを追いかけた記憶を持つ者にとって、この企画は単なる音楽の羅列ではなく、青春の断片を呼び覚ますパスポートとも言えるだろう。
1997年。音楽シーンはまさに激動の時代だった。CDの売り上げがまだ右肩上がりで、ミリオンセラーが続出した一方で、インターネット黎明期、音楽配信という新たな波も静かに打ち寄せ始めていた。この「NOW」シリーズが取り上げる楽曲たちは、当時の音楽雑誌の表紙を飾り、ラジオから常に流れていた、まさに時代の音だったはずだ。J-POPの黄金期を彩ったヒット曲、海外からの影響を受けたサウンド、そしてまだアナログレコードの温もりを求める声も確かに存在した。
しかし、この企画は単なるノスタルジーに浸るだけでは終わらない。学生である我々にとって、1997年はまだ生まれていない、あるいは物心つくかどうかの時代だ。当時の音楽、文化、そして社会の空気を、この「NOW」というフィルターを通して、私たちは改めて「知る」ことができる。なぜこの曲がヒットしたのか、当時の若者は何を聴き、何を感じていたのか。それは、今の私たちが抱える悩みや喜び、そして未来への希望と、意外な共通点を見出すきっかけになるかもしれない。
情報化社会の進展と共に、音楽との触れ合い方も劇的に変化した。今はストリーミングサービスで膨大な数の楽曲にアクセスできる。あの頃のように、一枚のCDを選び、歌詞カードをじっくり読み込むといった体験は希薄になったかもしれない。だからこそ、過去の音楽、特にそれが生まれた時代背景と共に提示されることは、現代の私たちに音楽の本質、そして文化の移り変わりについて深く考える機会を与えてくれるのだ。
HMVの「NOW」シリーズが私たちに投げかけるのは、過ぎ去った日々の輝きだけではない。それは、時代が音楽をどう変え、音楽が時代をどう彩ってきたのかという、壮大な物語である。そして、その物語は決して過去のものではなく、今の私たちの音楽体験、さらには未来の音楽の形を考える上での重要な示唆を含んでいる。
ぜひ、この機会に1997年の「NOW」に耳を傾けてみてほしい。そこには、失われたと思っていた「何か」が、きっと見つかるはずだ。そしてそれは、私たち自身の「今」をより豊かにし、未来へと繋がる新たな発見をもたらしてくれると信じている。この懐かしさが、新たな知的好奇心を刺激し、私たちの時代を映し出す新しい「NOW」を生み出す力となることを願ってやまない。
懐かしの1997年へタイムスリップ！HMVがお届けする「NOW YEARBOOK」コンピレーション最新作！,HMV
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