社説：高齢化社会の安全運転管理 – 山口県警の取り組みを機に、免許制度の抜本的見直しを急げ
山口県警が令和7年度の安全運転管理者講習で、高齢者講習の充実やVRを活用した危険予測訓練の導入を発表した。高齢化が深刻化する地方にあって、一見すると地道な、しかし重要な一歩と言えるだろう。だが、この取り組みを単なる「対策」として捉えるべきではない。高齢ドライバーによる事故は後を絶たず、社会全体で高齢者の安全運転をどう支えるか、根本的な議論が必要な段階に来ているのだ。
現在の免許制度は、更新時の講習や認知機能検査などが存在するものの、加齢に伴う身体機能の低下を十分に考慮しているとは言い難い。VR訓練の導入は評価できるが、それはあくまで一部の安全運転管理者を通じた間接的な対策に過ぎない。高齢者自身が自らの運転能力を客観的に把握し、安全運転を継続するための支援体制こそが不可欠だ。
そこで、私たちは以下の提案を行う。
- 運転免許更新制度の抜本的見直し： 一律的な更新制度を見直し、高齢者の運転能力をより詳細に評価する仕組みを導入すべきだ。例えば、運転シミュレーターを活用した実技試験の義務化や、専門医による診断を義務付けるなど、多角的な評価が必要となる。
- 地域包括ケアシステムとの連携強化： 高齢者の運転能力低下は、認知症や運動機能障害など、様々な要因が複合的に絡み合っている。地域包括ケアシステムと連携し、医療・福祉の専門家が運転能力の評価に関わることで、より適切な支援が可能となる。
- 運転卒業支援の充実： 高齢者が運転を卒業せざるを得ない状況になった際、公共交通機関の利用促進や、生活支援サービスの提供など、代替手段を確保することが重要だ。地域の実情に合わせた多様な支援策を拡充し、運転卒業後の生活を支える必要がある。
山口県警の取り組みは、高齢化社会における安全運転管理の重要性を改めて認識させる契機となる。しかし、安全運転管理者講習の充実だけでは、高齢ドライバーによる事故を根本的に解決することはできない。免許制度の見直し、地域包括ケアシステムとの連携強化、運転卒業支援の充実という３つの柱を中心に、政府、自治体、そして国民一人ひとりが真剣に向き合い、議論を深めるべきだ。
高齢者の移動の自由を尊重しつつ、安全な社会を実現するために、今こそ、革新的な視点を持って制度設計に取り組むべき時である。
山口県警からのお知らせ：令和7年度の安全運転管理者等講習、オンライン講習（1回目）の受付は終了しました,山口県警
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