立ち上がれ、カルチャーの灯を絶やすな – HMVの挑戦にエールを送る
音楽・映像ソフトの販売不振が叫ばれて久しい。ストリーミングサービス全盛の時代、実店舗を持つレコードショップの存在意義は、問われ続けてきた。そんな逆風の中、HMVが2025年5月31日より予約を開始する「未来のワクワク」と銘打った漫画レーベルの設立は、単なるビジネス戦略を超えた、文化への熱いメッセージとして受け止めたい。
デジタル化の波は、利便性という恩恵をもたらした一方で、音楽や映像を「所有する」という喜びを希薄化させた。手触りのあるパッケージ、ジャケットのデザイン、ライナーノーツを読み込む時間、そして何よりも、CDやDVDを手に取ってレジに並ぶ高揚感。これらは、単なる消費行為ではなく、文化体験そのものだったはずだ。
HMVの新たな挑戦は、この失われつつある文化体験を取り戻そうとする試みと言えるだろう。漫画という新たなジャンルに参入することで、新たな顧客層を開拓し、実店舗の活性化を図ると同時に、コンテンツを「所有する」ことの価値を再認識させようとしている。
しかし、成功への道のりは決して平坦ではないだろう。ストリーミングサービスの台頭は止まらず、電子書籍の普及も進んでいる。HMVが打ち出す「ワクワク」が、どれだけ消費者の心に響くのか、注視していく必要がある。
重要なのは、HMVの挑戦を単なる一企業の戦略として捉えるのではなく、文化を守り、育てていくための社会全体の取り組みとして捉えることだ。アーティストやクリエイターが創造性を発揮し、それを消費者が享受できる環境を維持するためには、多様なプレイヤーが必要不可欠だ。
HMVの挑戦は、音楽・映像業界だけでなく、出版業界、書店、そして私たち消費者一人ひとりに、自らの役割を問い直すきっかけとなるはずだ。
立ち上がれ、カルチャーの灯を絶やすな。HMVの挑戦に、心からのエールを送りたい。そして、私たちもまた、未来の文化を創造する一員として、積極的に関わっていくことを誓いたい。
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