社説：高齢者も介護者も笑顔に？ 経産省の「高齢者向けビジネス」推進に潜む落とし穴
経済産業省が「高齢者向けビジネス」の推進に乗り出した。高齢者自身が元気で活躍できる社会を目指すという大義名分は理解できる。しかし、その裏に潜む問題点を見過ごすことはできない。
記事によれば、経産省は高齢者や介護者のニーズに応える製品やサービスを開発・展開する企業を支援するという。一見すると、高齢化社会の課題解決に貢献する素晴らしい取り組みに見える。しかし、私たちは問わねばならない。本当にこれは、高齢者とその家族のためになるのだろうか？
第一に、これは高齢者を「市場」として捉える発想に他ならない。高齢者のニーズをビジネスチャンスと捉え、企業に利益を追求させることで、本当に必要なサービスが提供されるのか。むしろ、不必要な高額商品やサービスが蔓延し、高齢者の負担を増やすことにならないか。
第二に、介護という重い負担を、企業に丸投げする危険性がある。介護は家族の愛情や絆によって支えられるべきものではないのか。それをビジネスとして捉え、外部に委託することで、家族の繋がりが希薄化し、高齢者の孤独感を深めることにならないか。
第三に、本当に必要なのは、企業による「高齢者向けビジネス」ではなく、社会保障制度の充実である。介護保険制度の見直し、介護人材の育成、地域包括ケアシステムの強化など、根本的な解決策を講じることこそが、高齢者とその家族にとって最も重要なことではないか。
もちろん、高齢者のQOL（生活の質）向上に繋がる製品やサービスが登場することは歓迎すべきことである。しかし、経済効率のみを追求し、弱者を食い物にするようなビジネスモデルは断固として拒否しなければならない。
経産省には、安易な「高齢者向けビジネス」推進に走るのではなく、高齢者福祉の本質を見据え、真に高齢者とその家族のためになる政策を打ち出すことを強く求めたい。私たちは、高齢者が安心して暮らせる社会を、ビジネスではなく、公共の力で実現しなければならない。
私たちは問う。これは本当に「笑顔」のためになるのか？
高齢者も介護する人も笑顔に！経済産業省が「高齢者・介護関連サービス産業」を応援する計画を発表,経済産業省
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