【社説】大阪公立大「CSV経営研究会」始動：社会課題解決と企業価値向上への羅針盤となれ
大阪公立大学が「CSV経営研究会」をスタートさせた。CSV（Creating Shared Value：共通価値の創造）とは、企業の経済的な利益追求と社会課題の解決を両立させる経営戦略である。この研究会の発足は、社会が直面する課題解決への貢献と、企業価値の向上を両輪で目指す、新時代の企業経営のあり方を模索する上で、大いに期待できる。
近年、気候変動、貧困、格差といった社会課題は深刻さを増し、その解決に向けて、政府やNPOだけでなく、企業の積極的な関与が不可欠となっている。同時に、投資家や消費者も、企業の社会貢献度を重視する傾向が強まっている。社会課題への取り組みは、もはや企業のCSR（企業の社会的責任）活動の一環ではなく、企業が持続的に成長するための、経営戦略の中核に据えるべきものなのだ。
CSV経営は、社会課題をビジネスチャンスと捉え、革新的な製品やサービス、ビジネスモデルを生み出す可能性を秘めている。例えば、再生可能エネルギー事業への参入、途上国における医療・教育サービスの提供、高齢者向けの介護・福祉サービスの開発など、様々な分野でCSV経営の実践が期待できる。
大阪公立大学が発足させた「CSV経営研究会」には、企業、研究者、行政関係者などが集い、CSV経営に関する知識やノウハウを共有し、新たな連携を生み出すことが期待される。特に、地域に根差した中小企業にとっては、CSV経営の実践を通じて、地域社会への貢献と企業価値の向上を同時に実現する絶好の機会となるだろう。
しかし、CSV経営は、単なるイメージ戦略や、既存の事業に「社会貢献」というラベルを貼るだけの「グリーンウォッシュ」に陥ってはならない。真に社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現に寄与するものでなければならない。そのためには、企業は、自社の事業活動が社会に与える影響を深く理解し、ステークホルダーとの対話を重ね、透明性の高い情報開示を行う必要がある。
大阪公立大学の「CSV経営研究会」には、学術的な知見に基づき、CSV経営の理論と実践を結びつけ、企業が真に社会に貢献できるCSV経営を推進する役割が求められる。また、研究会を通じて、CSV経営の成功事例を広く共有し、そのノウハウを普及させることで、より多くの企業がCSV経営に取り組むことを促すべきである。
私たちは、大阪公立大学の「CSV経営研究会」が、社会課題解決と企業価値向上という二つの目標を両立させるための羅針盤となり、日本経済の持続的な発展に貢献することを強く期待する。企業は、CSV経営を通じて、社会から信頼され、支持される存在となることで、より良い社会の実現に貢献できるはずだ。
大阪公立大学が「CSV経営研究会」をスタート！これからの企業と社会のあり方を考えるキックオフ講演会を開催します,大阪公立大学
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