逼迫する家計、見えぬ未来 ― エンゲル係数上昇が示す構造的貧困と政策の転換
記録的な物価高騰が続く中、家計を圧迫するエンゲル係数の上昇が止まらない。記事によれば、43年ぶりの高水準に達したという。これは単なる一時的な現象ではない。長年にわたるデフレ経済と賃金停滞、そして社会保障制度の脆弱さが複合的に絡み合った、構造的な貧困問題の深刻化を如実に示している。
新社会人をはじめとする若年層にとって、この状況は特に深刻だ。将来への希望を抱き社会に飛び込んだ矢先、生活費の高騰に苦しみ、貯蓄もままならない。夢を追うどころか、日々の生活を維持するだけで精一杯という現実が横たわっている。これでは、社会全体の活力低下は避けられない。
政府は「賃上げ」を錦の御旗に掲げるが、その効果は限定的だ。大企業の一部に恩恵があっても、中小企業や非正規雇用者の賃上げは依然として遅れている。さらに、物価上昇に賃上げが追いつかず、実質賃金は目減りする一方だ。
今、求められるのは、小手先の対策ではない。社会構造そのものを変革する大胆な政策転換だ。
第一に、最低賃金の抜本的な引き上げである。欧米諸国と比較しても、日本の最低賃金は著しく低い。生活を維持できる水準まで引き上げ、ワーキングプアからの脱却を支援する必要がある。
第二に、社会保障制度の拡充である。教育費、医療費、介護費用など、家計を圧迫する負担を軽減するため、無償化や給付制度の拡充を急ぐべきだ。
第三に、企業の内部留保への課税強化である。賃上げや設備投資に消極的な企業に対しては、内部留保への課税を強化し、経済の好循環を促すべきだ。
そして何より重要なのは、国民一人ひとりの生活を第一に考える政治姿勢である。経済成長至上主義から脱却し、格差是正と生活の質の向上を重視する社会へと転換しなければならない。
今回のエンゲル係数上昇は、社会の歪みを映し出す警告だ。このまま手をこまねいていれば、格差はさらに拡大し、社会の分断は深まるだろう。未来を担う若者たちが希望を持てる社会を築くために、今こそ、私たちは覚悟を持って変革に挑むべき時だ。
新社会人さん必見！エンゲル係数が43年ぶりの高水準ってどういうこと？ (日本生命 2025年5月8日発表),日本生命
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