消費者庁長官会見に見る、デジタル化時代の消費者保護の課題
先日、消費者庁の新井長官による記者会見が行われた。会見では、デジタル化の進展に伴う消費者問題の多様化と複雑化、そしてそれに対応するための消費者庁の取り組みが説明された。しかし、その内容からは、消費者保護の現場における喫緊の課題が浮き彫りになったと言わざるを得ない。
特に注目すべきは、高齢者を中心としたデジタル弱者に対する情報格差の問題である。会見では、デジタル技術を活用した情報提供の重要性が強調されたが、同時に、デジタル機器の操作に不慣れな層への配慮が不可欠であることも示唆された。しかし、具体的な対策については、今後の検討課題として先送りされた感が否めない。
デジタル化は、消費者にとって利便性をもたらす一方で、悪質な事業者にとっては新たな詐欺の手口を容易にする側面も持つ。巧妙化する手口に対応するためには、消費者庁は、AIやビッグデータといった最新技術を駆使した監視体制の強化を急ぐ必要がある。同時に、消費者自身が情報リテラシーを高め、自衛のための知識を身につけることも重要となる。
また、会見では、越境ECの増加に伴うトラブルへの対応についても言及された。しかし、海外事業者に対する日本の法律の適用には限界があり、国際的な連携強化が不可欠である。政府は、関係各国との協力体制を構築し、消費者保護のための国際的なルール作りを主導すべきである。
消費者庁は、消費者保護の砦として、常に時代の変化に対応し、その役割を果たさなければならない。今回の会見を機に、消費者庁は、デジタル化時代における消費者保護のあり方を改めて見つめ直し、国民が安心して消費活動を行える社会の実現に向けて、より一層の努力を求めたい。
消費者庁からのお知らせ：新井長官の記者会見内容が公開されました（2024年4月24日実施）,消費者庁
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