富士山有料化、その先に問うべき「公共」のあり方
富士山の景観維持と安全確保を名目に、来夏から登山規制と有料化が始まる。一見すると合理的な施策だが、その裏に潜む問題点を見過ごしてはならない。
今回の規制は、過剰な観光客による環境破壊や遭難事故の増加に対する、いわば「事後対策」だ。しかし、本当に問うべきは、なぜそのような状況を招いてしまったのか、という根本的な原因である。
富士山は、日本を象徴する景観であり、国民共有の財産であるはずだ。しかし、近年は観光資源としての側面ばかりが強調され、経済効果を優先するあまり、その価値が損なわれてきたのではないか。有料化は、事実上、富士山へのアクセスを一部の人々に限定することになりかねない。これは、国民共有の財産へのアクセスを制限するという点で、看過できない問題だ。
もちろん、環境保護や安全確保は重要である。しかし、それらは有料化によってのみ達成されるものではないはずだ。より重要なのは、登山者一人ひとりの意識改革と、持続可能な観光のための戦略である。入山料に頼るのではなく、登山者への啓発活動や、環境負荷の少ない登山スタイルの普及、公共交通機関の整備など、長期的な視点に立った取り組みこそが必要とされている。
富士山の問題は、日本の観光政策全体の縮図と言える。経済効果を優先するあまり、文化や自然といった本来の価値が軽視され、結果として持続可能性を損ねてしまう。今こそ、富士山の有料化を契機に、「公共」とは何か、国民共有の財産とは何かを改めて問い直すべきだ。
富士山は、単なる観光資源ではない。それは、日本の歴史と文化、そして自然の象徴である。その価値を守り、次世代へと引き継ぐために、私たちは今、根本的な視点の転換を迫られている。
令和7年度富士登山規制に係る現地対応業務（富士宮口～御殿場口）委託企画提案, 静岡県
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