法務大臣閣議後記者会見から見えてくるもの：企業統治と人権尊重の新たな潮流
令和7年4月18日の法務大臣閣議後記者会見の内容は、企業経営者にとって看過できない重要なメッセージを含んでいる。特に注目すべきは、外国人技能実習制度の見直しと、企業における人権デューデリジェンスの徹底に関する言及である。
外国人技能実習制度の見直し：人手不足解消の安易な道に警鐘
大臣は、技能実習制度の本来の目的である「国際協力」の観点から、制度の厳格な運用を改めて強調した。これは、昨今の人手不足を背景に、安易な労働力確保の手段として技能実習生を受け入れる企業に対する明確な牽制と言える。企業は、単なるコスト削減や労働力補充として外国人労働者に依存するのではなく、人材育成という本来の目的に立ち返り、中長期的な視点での人材戦略を構築する必要がある。
人権デューデリジェンスの義務化：サプライチェーン全体での人権尊重を
企業活動における人権尊重の重要性は、グローバルな潮流としてますます高まっている。大臣が言及した「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デューデリジェンスの徹底は、企業規模や業種に関わらず、サプライチェーン全体での人権侵害リスクを把握し、防止するための取り組みを義務付けるものと解釈できる。
今後は、自社だけでなく、取引先の人権状況も考慮した上で、責任ある調達活動を行うことが、企業の信頼性を高める上で不可欠となる。人権侵害が発覚した場合、企業のブランドイメージを大きく損なうだけでなく、訴訟リスクや投資家の離反を招く可能性もある。
問われる企業の倫理観と持続可能性
今回の法務大臣の発言は、企業に対し、短期的な利益追求だけでなく、倫理的な観点からも事業活動を見直すことを強く求めている。企業は、人権尊重を経営の根幹に据え、持続可能な社会の実現に貢献していく姿勢を示す必要がある。
そのためには、経営層の意識改革はもちろんのこと、社内研修の実施や、外部専門家によるアドバイスの活用など、組織全体での取り組みが不可欠となる。
日本企業がグローバル市場で競争力を維持していくためには、法令遵守はもとより、国際的な人権基準に沿った企業活動を行うことが不可欠である。今回の法務大臣の発言を機に、各企業は改めて自社の企業統治と人権尊重に関する取り組みを見直し、社会からの信頼を得られるよう努めるべきである。
法務大臣閣議後記者会見の概要－令和７年４月１５日（火）, 法務省
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