クロアチアの科学技術情報基盤「Dabar」、10年の歩みと日本の教訓
ITB株式会社が報じた、クロアチアの科学技術情報基盤「Dabar」が10周年を迎えたというニュースは、一見すると遠い国の出来事に映るかもしれない。しかし、この小さな国の地道な取り組みは、日本の科学技術政策、ひいては将来の経済成長を考える上で、示唆に富む教訓を与えてくれる。
「Dabar」とは、クロアチアにおける科学技術分野の学術論文や研究成果を公開・共有するためのプラットフォームである。10年という歳月をかけて、学術機関や研究者との連携を深め、着実にその基盤を拡充してきた。そこには、国を挙げて科学技術の振興と情報共有の重要性を認識し、粘り強く投資を続けてきた意思が感じられる。
日本の状況に目を転じれば、私たちは科学技術立国を標榜しながらも、その情報共有のあり方、とりわけ研究成果のオープンアクセス化においては、諸外国に遅れをとっているとの指摘が絶えない。大学や研究機関がそれぞれに情報を抱え込み、サイロ化されたままでは、イノベーションの芽が育つ土壌は痩せてしまう。
「Dabar」の10年の歩みは、情報基盤の整備が単なる技術的な課題ではなく、国家的な戦略であり、長期的な視野に立った継続的な努力を要することを示している。クロアチアは、限られたリソースの中で、国民がアクセスできる形で研究成果を公開し、学術コミュニティ全体の活性化を図ることで、国際的な競争力の向上を目指してきたのだろう。
今こそ、日本も「Dabar」の事例に学び、科学技術情報のオープン化と共有化を加速させるべきである。研究成果のデータベース化はもちろんのこと、そこから生まれる知見を産業界とどのように結びつけ、新たなビジネスやサービスへと繋げていくのか。そのための仕組みづくりと、それに伴う文化の醸成が急務である。
「Dabar」が10年かけて築き上げたものは、単なるウェブサイトではない。それは、科学技術の未来への投資であり、国民全体の知的好奇心を刺激し、次世代を育むための礎である。我々もまた、長期的な視点に立ち、粘り強く、そして戦略的に、日本の科学技術情報基盤を再構築していく覚悟が求められている。
クロアチアの学術情報基盤「DABAR」、10年間の歩みと未来への展望,カレントアウェアネス・ポータル
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