満たされない「モノ」、それでも止まらない消費：未来を担う私たちへの問いかけ
「ねぇ、君もそんなに欲しいもの、ないの？」
先日、あるニュース記事に目を奪われた。それは、日本が「モノ」を「持っている」にも関わらず、なぜか「買い続けている」という、一見矛盾した現状を指摘するものだった。高度経済成長期を経て、物質的な豊かさを享受してきたはずの私たち。それでも、なぜ私たちは「モノ」を買い漁るのだろうか。そして、その消費行動は、未来を担う学生である私たちに、どのような影響を与えているのだろうか。
記事が描くのは、一見すると「飽和」した社会の姿だ。家電、衣類、趣味の道具。もう十分なほど持っているはずなのに、私たちは次々と新製品に手を伸ばし、SNSで「お気に入り」を披露する。そこには、単なる必需品の購入というよりは、何らかの「欲求」を満たそうとする行動が見て取れる。それは、承認欲求か、あるいは「変わりたい」という漠然とした願望か。あるいは、情報過多な現代社会において、次々と現れる「新しいモノ」が、私たちの注意を引きつけ、購買意欲を掻き立てるからなのだろうか。
この「満たされない欲求」と「止まらない消費」の構造は、私たち学生にとっても他人事ではない。大学生活は、自己形成の時期であると同時に、将来への投資とも言える。高価な教材、最新のPC、おしゃれな服。それらすべてが、私たちを「より良い自分」へと導いてくれるかのような錯覚に陥る。しかし、本当にそうだろうか。手に入れた「モノ」が、一時的な満足感をもたらすだけで、本質的な成長や幸福に繋がっているのか。私たちは、その「モノ」に囲まれながら、本当に「満たされている」と言えるのだろうか。
むしろ、過剰な消費は、私たちから大切なものを奪っているのではないか、とすら思う。限られた時間とエネルギーを、「モノ」を手に入れるための情報収集や、購入後の手入れ、そしてSNSでの発信に費やしてしまう。その間に、本当に価値のある経験、例えば、友人との深い対話、未知の分野への探求、あるいは地域社会への貢献といった機会を、私たちは失っているのではないだろうか。
そして、この「モノ」への執着は、地球環境という、私たち学生が最も真剣に考えなければならない未来にも、暗い影を落とす。大量生産、大量消費、そして大量廃棄。このサイクルのどこかに、私たちは無理を生じさせている。卒業後、社会に出て、親世代以上に豊かな生活を築けるのか。いや、そもそも、次世代に持続可能な地球環境を残せるのか。そんな不安が、静かに、しかし確実に、私たちの胸に迫りくる。
今こそ、私たち学生は、この「モノ」への盲目的な消費行動に、立ち止まって問いかけるべき時ではないだろうか。何が本当に私たちを豊かにするのか。何が、私たち自身の、そして社会全体の、持続可能な未来に繋がるのか。
「モノ」ではなく、経験。 「所有」ではなく、共有。 「消費」ではなく、創造。
そんな、より本質的な価値観へと、私たちの視点をシフトさせていく必要がある。それは、決して「何もしない」「何も買わない」という刹那的な否定ではない。むしろ、自分にとって、そして社会にとって、真に意味のある「選択」をしていくための、能動的な行動だ。
次に何かを買おうと思った時、あるいは何かを手に入れようとした時、ほんの一瞬で良い。立ち止まって考えてみてほしい。「これは、本当に私に必要なのか？」「これは、どんな未来に繋がるのだろうか？」と。その問いかけこそが、私たち学生が、この「モノ」に溢れた社会で、真の豊かさを見出し、より良い未来を築いていくための、第一歩となるはずだ。
なぜ国はケンカをしながらも、お買い物をしているの？ ～新しい本が教えてくれる、世界のおかしな貿易のお話～,Massachusetts Institute of Technology
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