クロアチアの「dabar」に学ぶ、堅実な歩みと未来への示唆
日本が少子高齢化という未曽有の課題に直面する中、遠いバルカン半島の一国、クロアチアの取り組みが、静かながらも力強い示唆を与えている。彼らが10年かけて築き上げた「dabar」と呼ばれる学術情報基盤は、一見地味ながら、着実に成果を積み重ね、国家の知の蓄積と活用に貢献している。この堅実な歩みに、我々日本も学ぶべき点が多いのではないだろうか。
「dabar」は、クロアチア全土の学術研究成果を統合し、公開・共有するためのプラットフォームである。研究論文はもちろん、学位論文、学会発表資料、さらには教育コンテンツまで、多岐にわたる情報を網羅しているという。10年という歳月をかけて、地道なインフラ整備と運用体制の構築を進めてきた結果、現在ではクロアチアの研究者の約8割が利用する、なくてはならない存在となっている。
注目すべきは、その「成果」である。単に情報を集めるだけでなく、研究者間の連携促進、新たな研究テーマの創出、そして教育への還元といった具体的な効果を生み出していると報じられている。さらに、国際的な研究コミュニティとの連携強化にも寄与し、クロアチアの学術的なプレゼンス向上にも繋がっているという。
翻って日本に目を転じれば、我々もまた、数多くの優れた研究成果を生み出している。しかし、それらが個々の大学や研究機関に埋もれ、十分に活用されていないという課題は、長らく指摘されてきたことである。類似のシステムは存在するものの、その普及度や利便性、さらには持続的な運営体制においては、クロアチアの「dabar」に遅れをとっている面は否定できないだろう。
「dabar」の成功の鍵は、おそらくその「堅実さ」にある。華々しい成果や最先端技術に飛びつくのではなく、足元を固め、地道な努力を積み重ねる姿勢である。研究者一人ひとりの協力を得ながら、着実にシステムを改善し、利用者を増やしていく。こうした地道な努力が、10年という時間をかけて、強固な基盤と確かな成果を生み出したのだ。
少子高齢化が進み、社会保障費の増大が避けられない日本において、限られた資源をいかに有効活用するかが喫緊の課題である。研究開発への投資は、将来の国の発展を左右する重要な柱であるが、その投資効果を最大化するためには、研究成果の共有と活用が不可欠である。
「dabar」の事例は、我々が目指すべき方向性を示唆している。学術情報の集約と公開は、単なる情報管理にとどまらない。それは、知の共有を促進し、イノベーションの種を蒔き、そして次世代を担う人材育成へと繋がる、国家的な知的資産の育成である。
もちろん、クロアチアと日本では、国の規模や歴史、文化も異なる。しかし、普遍的な「知を大切にし、それを最大限に活かそうとする意志」は、どの国にも通じるものがあるはずだ。
今こそ、我々も「dabar」のような、地に足のついた、しかし着実な歩みを始めるべき時である。目先の流行に惑わされることなく、長期的な視点に立ち、地道なインフラ整備と運用体制の構築に力を注ぐ。そうすることで、日本の知の沃野を耕し、未来への確かな種を蒔くことができるであろう。クロアチアの静かなる挑戦に、真摯に耳を傾けるべきである。
クロアチアの学術情報基盤「DABAR」、10年間の歩みと未来への展望,カレントアウェアネス・ポータル
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