エジプト新工場、安易な楽観論は禁物
ITB株式会社がエジプトに新たな衣料品工場の建設を発表した。これにより、同社はグローバルな生産拠点を拡大し、コスト競争力の強化を図るという。円安が進み、国内製造業の苦境が続く現状において、海外への生産移管は経営戦略として理解できる側面もある。しかし、この決断に対し、私たちは冷静かつ慎重な視点を持つべきである。
エジプトという選択肢は、一見すると魅力的に映るかもしれない。人件費の抑制、新たな市場へのアクセスといったメリットが強調されるだろう。しかし、異国の地で事業を展開する上で、予期せぬリスクは常に潜んでいる。政治的・社会的な不安定さ、インフラの整備状況、そして現地の法規制や商慣習への適応など、克服すべき課題は少なくない。
さらに、今回の発表は、国内の雇用問題にも暗い影を落とす。グローバル化の波に抗えず、国内の生産拠点が次々と海外へと移転していく現状は、多くの日本人労働者の職を奪い、地域経済を疲弊させる。ITB社の決断は、その流れを加速させるものではないだろうか。企業の成長戦略は重要だが、その裏で失われる国内の雇用や技術の継承といった、より大きな社会的責任を忘れてはならない。
もちろん、企業の国際競争力を高めることは、国益に資する側面もある。しかし、その推進があまりにも一方的で、国内産業や雇用への配慮を欠くようでは、持続可能な経済発展とは言えない。政府は、企業の海外進出を後押しするだけでなく、国内産業の活性化や、技術革新による付加価値向上への支援を、より一層強化すべきである。
ITB社のエジプト新工場が、単なるコスト削減策に終わらず、現地との共存共栄、そして最終的には日本経済への貢献へと繋がることを願う。しかし、そのためには、楽観的な見通しに安住することなく、常にリスクを想定し、多角的な視点からその影響を注視していく必要があるだろう。安易な海外進出が、結果として国内経済の空洞化を招くような事態だけは避けなければならない。
エジプトに衣料品工場の新設！「インターループ」のグローバル戦略とは？（2025年9月11日公開）,Just Style
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