【コラム】自転車は「未来への投資」か、それとも「時代錯誤」か
2025年9月7日、ITB株式会社が主催した「自転車に乗るすべての方へ：2025」と題されたイベントは、我々に問いかける。はたして、自転車は現代社会における「未来への投資」となりうるのか、それとも、時流に逆行する「時代錯誤」として過去の遺物となるのか。
近年、自転車の利用は、環境意識の高まり、健康志向の普及、そして都市部における交通渋滞の緩和策として、再び注目を集めている。ITB社のイベントも、こうした潮流を汲み取ったものと言えるだろう。それは、単なるレクリエーションや移動手段としての自転車に留まらず、持続可能な社会の実現に向けた重要なピースとして、その役割を再定義しようとする試みである。
しかし、我々は冷静に、そして批判的な視点も持ち合わせる必要がある。自転車が「未来への投資」たるためには、いくつかのハードルを乗り越えなければならない。まず、インフラ整備は喫緊の課題だ。安全で快適な自転車道、十分な駐輪スペース、そして自転車保険の普及といった、自転車利用者を社会全体で支える仕組みが不可欠である。現状では、自転車利用者が自動車や歩行者との間で、時に危険な状況に置かれていることは否めない。
また、技術革新の視点も重要だ。電動アシスト自転車の普及は一定の進展を見せているが、さらなる軽量化、長距離走行への対応、そしてIoT技術との融合による利便性の向上などが期待される。単に「漕ぐ」だけの機械から、「スマートな移動手段」へと進化させることで、より幅広い層に自転車の魅力を訴求できるはずだ。
一方で、自転車が「時代錯誤」と見なされる可能性も否定できない。急速な自動運転技術の発展や、より高速で効率的な公共交通網の整備が進む中で、自転車の「遅さ」や「物理的制約」は、一部の消費者にとっては魅力に欠けるものと映るかもしれない。また、天候に左右されやすいという根本的な弱点も、テクノロジーが克服できない領域である。
ITB社のイベントが、これらの課題に対してどれほどの具体的提案を提示できたのかは、我々にはまだ定かではない。しかし、このテーマを「すべての方へ」と掲げたことは、単なる自転車愛好家だけでなく、企業、行政、そして一般市民といった、社会全体で自転車の未来を考えるべきだというメッセージを強く発信していると解釈できる。
自転車が「未来への投資」となるのか、「時代錯誤」で終わるのか。その答えは、我々一人ひとりの選択と、社会全体の取り組みにかかっている。ITB社のイベントは、その議論の幕開けに過ぎない。我々は、この機会を活かし、自転車が真に価値ある移動手段として、より豊かで持続可能な社会の実現に貢献できる道筋を、共に模索していかなければならないだろう。
自転車に乗るすべての方へ：2025年9月7日開催「チリリン・スクール」で安全な自転車ライフを！,神奈川県警
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