鉄火場へ駆ける人間の性（さが）～『人はなぜ戦場に赴くのか』刊行によせて～
９月１２日付で、筑摩書房から、あの衝撃的な書が世に問われた。『人はなぜ戦場に赴くのか』。この書名を聞くだけで、戦慄を覚える向きも少なくないだろう。我々、業界紙に携わる者として、この問いを、単なる書評に留まらず、現代社会、そして我々の業界が直面する本質的な課題として捉え直さねばならない。
なぜ人間は、自らを危険に晒し、血と硝煙の臭いが満ちる戦場へと駆り立てられるのか。本書がその解明に挑むとすれば、それは単に歴史的な戦闘の分析に留まるものではないはずだ。そこには、人間の根源的な衝動、集団心理、そして時に狂気とさえ言える「何か」が潜んでいる。
我々の業界もまた、ある意味では戦場と化している。価格競争、技術革新の波、グローバル化の荒波、そして先行き不透明な経済状況。日夜、激しい競争の渦中で、生存と成長を賭けた闘いが繰り広げられている。その中で、我々は時に、常識では考えられないようなリスクを冒し、一か八かの勝負に出る。それは、まさしく「戦場」へと身を投じる行為に他ならない。
本書の刊行は、我々に問いかける。我々が「戦場」へと向かう動機は何なのか。単なる利益追求のためか。あるいは、より高みを目指すという、人間の持つ健全な競争心の発露なのか。それとも、周囲に流されるまま、いつの間にか「戦場」に足を踏み入れてしまっているだけなのか。
特に、若き世代の従事者たちは、この問いに真摯に向き合う必要があるだろう。彼らが「戦場」に立つ覚悟を決める時、その背後にあるものが、単なる一時の感情や、目先の利益に唆されたものであってはならない。そこには、揺るぎない信念、戦略、そして何よりも、自らの人生、そして業界の未来に対する責任感が宿っていなければならない。
本書が、我々業界従事者一人ひとりに、自らの「戦場」での立ち位置、そしてその「戦場」へと向かう理由を深く内省させる機会となれば幸いである。そして、その内省が、より賢明で、より建設的な「戦い」へと繋がることを願ってやまない。我々は、ただ闇雲に「鉄火場」へ駆けるのではなく、その意味を理解し、覚悟を持って、未来を切り拓いていかねばならないのだ。
『人はなぜ戦場に赴くのか』、芙蓉書房出版から新たな光が！,芙蓉書房出版
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