金融規制の見直し、慎重かつ現実的な歩みを
金融庁が、いわゆる「防衛的な金融規制」の見直しに着手したという。かねてより、一部からは規制緩和を求める声が上がっていたが、今回の動きは、国際金融市場の動向や国内経済の現状を踏まえ、より実効性のある制度へと見直していくという、理路整然とした姿勢の表れであろう。
そもそも、金融規制は、予期せぬ金融危機から国民生活と経済基盤を守るための「防波堤」としての役割を担ってきた。その必要性は今も変わらない。しかし、時代とともに金融市場は複雑化し、グローバル化も進む中で、旧態依然とした規制が、かえって国内産業の競争力を阻害したり、新たな金融技術の発展を妨げたりする側面がないとは言えない。
重要なのは、今回の見直しが「規制緩和」という言葉に踊らされることなく、あくまで「防衛」という本質を見失わないことである。国際的な金融規制の潮流を的確に捉え、日本の金融システムが直面するリスクを冷静に分析した上で、本当に必要な改革は何なのか、その優先順位を間違えてはならない。
特に、近年急速に発展するフィンテック分野への対応は喫緊の課題である。新しい技術やサービスを適切に包摂しつつ、新たなリスクを生み出さないための、練り上げられた規制の枠組みが求められる。しかし、性急な規制緩和は、新たなバブルや不正行為の温床となりかねない。技術の進展とリスク管理のバランスを、慎重に見極める必要がある。
また、地域金融機関の再編や、中小企業への資金供給といった、国内経済の根幹に関わる問題も、今回の規制見直しの議論と無関係ではない。過度な規制が、地域経済の活性化を阻害したり、中小企業の成長機会を奪ったりすることがあってはならない。しかし、市場原理だけに任せれば、地方の金融インフラが脆弱化するという懸念も拭えない。
金融庁には、今回の見直しにおいて、一部の過激な意見に流されることなく、広範なステークホルダーの声に耳を傾け、国民全体の利益となるよう、長期的な視点に立った、現実的かつ着実な改革を進めていただきたい。金融という社会の血液が、健全に、そして力強く循環していくための、確かな一歩となることを期待する。
金融規制の見直しに向け、連邦準備制度理事会（FRB）などが公聴会をさらに開催 ― 市民参加の機会を拡大 ―,www.federalreserve.gov
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