デンマークからの「家畜肉」輸入再開、食卓の安全保障を問う
デンマークからの家畜肉輸入が再開されたというニュースは、一見、食料供給の安定化という明るい話題として受け止められるかもしれない。しかし、我々はいま一度、この決定の背景にある「安全保障」という視点から、冷静に、そして慎重に議論を深める必要がある。
食料、とりわけ肉という我々の生活に不可欠な基幹産業は、単なる経済活動の範疇にとどまらない。それは国家の存続を左右しかねない「食料安全保障」という、極めて重要な国家戦略の一翼を担うものである。今回の輸入再開が、どのような経緯を辿り、どのような条件の下で行われたのか。そして、その決定が日本の食料自給率、国内畜産業への影響、さらには国民の健康と安全にどのような影響を及ぼすのか。これらの点について、国民は十分な説明を受ける権利がある。
近年、世界情勢は不安定さを増し、サプライチェーンの脆弱性が露呈する場面が少なくない。このような時代にあって、食料の安定供給を外国からの輸入に過度に依存することは、国家としての脆弱性を露呈することに他ならない。もちろん、国際的な食料貿易は経済活動として重要であり、国民の食生活の多様化にも寄与する。しかし、それはあくまで「安全」という揺るぎない基盤の上に成り立つべきである。
今回の輸入再開にあたり、国内の生産者からは懸念の声も上がっている。安全基準や飼育環境の違い、そして価格競争力といった問題は、日本の畜産業の衰退を招きかねない。国内の生産基盤が弱体化すれば、将来的な食料危機において、我々はより一層、外国からの供給に頼らざるを得なくなる。これは、まさに食料安全保障の観点から、極めて憂慮すべき事態である。
我々は、経済合理性のみを追求するのではなく、国家としての持続可能性、そして国民の健康と安全を最優先に考えるべきである。輸入再開の是非について、政府は国民に対して透明性のある情報公開と、丁寧な説明責任を果たすことを強く求める。そして、この機会に、日本の食料自給率向上に向けた抜本的な対策、国内畜産業の育成・支援策を改めて検討し、着実に実行していくべきである。
食卓に並ぶ一皿の肉が、どのような道のりを経て、どのような安全基準を満たしてきたのか。その背景にある「食料安全保障」の重みを、我々国民一人ひとりが再認識し、この問題について深く考えていくことが求められている。
デンマークからの家きん肉、輸入再開！食卓に安心とおいしさを届けます,農林水産省
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