長寿社会の光と影 ～遺骨収容問題にみる、高齢化社会の新たな課題～
「長寿社会」――。かつては輝かしい未来の象徴であったこの言葉が、今、私たちの社会に新たな、そして重い課題を突きつけている。この度報じられた、70年近くもの間、遺骨が引き取り手のないまま収容され続けているという事実は、単なる個人の悲劇にとどまらず、超高齢化社会が抱える本質的な問題を浮き彫りにしている。
人生100年時代と言われる現代において、高齢者の増加は社会の活力の源泉となり得る。経験豊かで、地域社会に貢献できる高齢者の存在は、社会全体の知恵袋であり、担い手でもある。しかし、その一方で、人生の終盤に差し掛かった時、あるいはその前に、誰にも看取られることなく、あるいは遺された家族にも十分な手が差し伸べられないまま、静かに生涯を終える方々がいるという現実も、私たちは直視しなければならない。
今回報じられたケースは、その象徴と言えるだろう。70年もの歳月を経て、ようやく白骨化された遺骨が、社会へと「還ろう」としている。この間に、どのような社会状況の変化があり、どのような人々の営みがあったのか。想像を絶する時間の流れの中で、故人はどのような思いで、あるいは無念の思いで、この世を去ったのか。そして、故人を支えきれなかった、あるいは支えきれなかった社会のあり方について、私たちは深く考えさせられる。
遺骨の収容問題は、孤独死や無縁死といった、高齢化社会の「影」の部分を映し出す鏡である。経済的な困窮、家族関係の希薄化、地域社会とのつながりの喪失など、様々な要因が複雑に絡み合い、このような悲劇を生み出している。単に「遺骨を引き取る人がいない」という事実だけを捉えるのではなく、その背景にある社会構造の歪みや、人々の孤立といった問題に目を向けることが不可欠だ。
もちろん、自治体や関係機関の努力は続いている。しかし、70年もの歳月を要したという事実は、現状の対策が十分ではないことを物語っている。法整備の遅れ、行政の対応能力の限界、そして何よりも、社会全体として「誰一人取り残さない」という意識が、まだ十分に浸透していないのではないか。
長寿社会の実現は、国民一人ひとりの「幸福」に繋がるものでなければならない。そのためには、人生の始まりだけでなく、その終わりまで、人間らしい尊厳をもって迎えられる社会を築くことが求められる。遺骨の収容問題は、そのための大きな警鐘と受け止め、社会全体で、高齢者の孤立を防ぎ、人生の最期まで支え合える仕組みづくりに、真摯に取り組むべき時である。
故人が安らかに眠れるよう、そして二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、私たちは、この事実から目を背けず、より温かく、より包容力のある社会の実現に向けて、一歩ずつ前進していかなければならない。
長生炭鉱、ついに遺骨収容へ ～ 70年以上の時を経て、尊厳ある追悼へ,社民党
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