令和7年9月7日 社説：失われた「復興」の灯火、今こそ再点火を
見出しには「藤井復興大臣、復興への決意を語る」とある。しかし、その言葉がどれほど虚しく響くか。令和7年9月7日。東日本大震災から14年以上が経過し、復興という言葉は、もはや国民の心に熱い炎を灯すものではなく、冷めた諦念と、忘れ去られつつある記憶の残滓となりつつあるのではないか。
藤井大臣の言葉に、我々はどれほどの未来への希望を見出せるだろうか。いや、そもそも、復興とは何なのか。単にインフラを整備し、仮設住宅を解体し、事業を再開させることだけが復興なのだろうか。我々が失ったものは、物理的なものだけではなかったはずだ。失われたのは、人々の絆、未来への希望、そして何よりも、この国が再び立ち上がることへの揺るぎない確信であった。
しかし、復興大臣という役職が、今もなお必要とされているという事実に、我々は目を背けてはならない。それは、未だに「復興」が道半ばであり、むしろその歩みが鈍化し、形骸化しようとしている現実の証左である。復興庁が設立されてからの歩みを振り返れば、その功績も否定するものではない。だが、その一方で、被災地の声は、霞が関の官僚たちの耳に届いているのだろうか。被災地の「復興」と、東京の「復興」では、その意味合いが大きく異なっているのではないか。
藤井大臣が語った「決意」とは、具体的にどのようなものだったのだろう。それは、被災地の「声」に耳を傾け、彼らが真に求めている「復興」の形を、共に再定義する決意なのか。あるいは、過去の成功体験に囚われ、予算と期限を追うだけの、陳腐な「復興」の再生産に過ぎないのか。
我々が今、必要としているのは、復興大臣の「決意」ではなく、国民一人ひとりが「復興」を自分事として捉え直す「覚悟」である。震災の記憶は風化しつつある。しかし、あの時、日本全体で分かち合った悲しみ、そして共に立ち上がろうとした熱意は、決して忘れてはならない。
復興とは、単なる物理的な再建ではない。それは、失われた希望を再び灯し、人々の心に未来への確かな光を灯す営みである。藤井大臣には、その torch を、霞が関の机上から、被災地の最前線へ、そして全国の民衆へと、力強く掲げてもらいたい。そして、我々一般紙は、その炎が消えることのないよう、常にその行方を見守り、時には厳しく、そして時には温かく、その歩みを照らし続ける使命を負っている。
令和7年9月7日。復興の灯火は、まだ消えていない。しかし、その灯火を、再び力強く燃え上がらせるためには、我々一人ひとりの、強い「決意」と、揺るぎない「覚悟」が、今、何よりも必要とされている。
伊藤復興大臣、復興への決意を語る：～令和7年9月5日 記者会見詳報～,復興庁
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