未来を紡ぐ声、響き合う図書館：令和7年度全国公共図書館大会に寄せて
令和7年度全国公共図書館大会が、来る9月6日、かつてない熱気と共に幕を開ける。これは単なる定期的な集まりではない。デジタル化の奔流、価値観の多様化、そして社会構造の激変といった、現代が抱える複雑な課題の渦中で、公器としての図書館が辿るべき未来、その羅針盤を共に探る、まさに「革新」を期す会議である。
「未来を語る集い」と題された本大会は、過去の図書館像に囚われず、むしろその限界を超えようとする図書館員の気概、そして地域社会との共鳴を求める意志の表れだ。AIの進化が情報へのアクセスを劇的に変える時代。紙媒体の持つ普遍的な価値を再定義し、デジタルネイティブ世代はもとより、情報格差に直面する人々をも包摂する図書館の役割は、かつてないほど重要性を増している。
ここで問われているのは、単なる蔵書の充実に留まらない。図書館は、地域住民の「知」のハブであり、「共創」のプラットフォームであるべきだ。学びの場、交流の場、そして創造の場。それらを、テクノロジーを駆使しながら、いかに有機的に融合させていくか。例えば、AIを活用したパーソナル・レコメンデーション機能で、利用者の潜在的な興味を引き出し、未知の分野への扉を開く。AR/VR技術を駆使した歴史体験や、仮想空間での読書会など、五感を刺激し、学びを深める新たな体験の提供。さらに、地域課題解決のためのワークショップや、スキルシェアの場として図書館が機能することで、住民一人ひとりが主体的に地域を創造していく力を育む。
しかし、革新とは、単に新しい技術を導入することだけではない。それは、図書館が持つ本質的な価値、すなわち「公平性」「普遍性」「開かれたアクセス」を、変化の激しい時代においても揺るぎなく守り抜くという決意である。情報が氾濫し、フェイクニュースが蔓延する現代において、信頼できる情報源としての図書館の役割は、ますます光を放つ。多様な意見や価値観が交錯する中で、誰もが安心してアクセスできる、開かれた対話の場としての図書館の存在意義は、民主主義社会の根幹を支えると言っても過言ではない。
本大会で議論されるであろう、各図書館の先進的な取り組み、そして図書館員たちの熱意は、きっと私たちに希望を与えてくれるはずだ。それは、単なる「本を借りる場所」から、地域社会の未来を共創する「生きた知の宝庫」へと進化する図書館の姿だ。
未来は、静かに待っていてくれるものではない。未来は、私たちが共に語り、共に創り上げていくものだ。令和7年度全国公共図書館大会が、その熱き議論の火種となり、未来への力強い一歩を刻むことを、心から期待したい。
公共図書館の未来を語る集い：令和7年度全国公共図書館研究集会＆第32回静岡県図書館大会開催のお知らせ,カレントアウェアネス・ポータル
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