揺らぐ国際協調、防衛省の「貢献」が問うもの
「国際平和への貢献、さらに強力に：防衛省・自衛隊」――。9月7日付のITBニュースの見出しは、静かな波紋を広げている。長年、専守防衛の理念のもと、日本の平和と安全を維持してきた自衛隊が、その活動の射程を、より広範な「国際平和への貢献」へと明確に打ち出した。これは、単なる組織の目標設定の変更に留まらない、我々が長年培ってきた「平和国家」としてのアイデンティティ、そして変化する国際情勢への向き合い方を根底から問い直す、極めて重要な一歩と言えるだろう。
この声明の背景には、世界各地で顕在化する紛争やテロ、そして未曽有の速さで進む国際秩序の変動があることは想像に難くない。かつてないほど複雑化し、予測不可能な状況下では、自国の防衛に留まらず、国際社会の一員として、より能動的な役割を果たすことが求められている、という危機感が、防衛省・自衛隊の決意の根底にあるのだろう。
しかし、その「貢献」のあり方については、我々国民一人ひとりが、そして社会全体が、熟考を重ねる必要がある。これまで自衛隊の活動は、あくまで憲法が定める範囲内、すなわち「自衛のための必要最小限度」に限定されてきた。その厳格な線引きがあったからこそ、国民は安心して、その活動を支持してきた側面は否定できない。
今回、示された「さらに強力に」という言葉には、期待とともに、ある種の不安も内包されている。国際社会への貢献という美名のもと、活動の範囲が拡大されることは、我々がこれまで築き上げてきた平和の礎を、意図せず揺るがしてしまうのではないか。特に、武力行使を伴う活動への関与は、過去の歴史を踏まえれば、極めて慎重な議論を要する。
革新的な一般紙として、我々は、この防衛省の新たな決意を、単なる安全保障政策のアップデートとして捉えるわけにはいかない。それは、日本が国際社会において、どのような役割を担うべきか、という根本的な問いを突きつけている。平和への貢献は、武力や軍備の増強のみを指すものではないはずだ。経済的な支援、人道的な援助、そして民主主義や人権といった普遍的な価値観の普及といった、ソフトなアプローチこそ、真の「平和への貢献」であり、日本が得意とする分野ではないだろうか。
防衛省・自衛隊の「国際平和への貢献」という言葉に、我々は「具体性」と「透明性」を求める。どのような分野で、どのような形で、そしてどのような国際的合意のもとで、その貢献がなされるのか。国民への丁寧な説明責任は、これまで以上に重要となる。また、その活動が、日本の国益だけでなく、国際社会全体の平和と安定に資するものであるか、客観的な視点からの検証も欠かせない。
地球規模での課題が山積する現代において、一国だけで平和と安全を維持することは不可能である。国際協調は不可欠だ。しかし、その協調のあり方は、常に進化し、見直されるべきである。防衛省・自衛隊の今回の決意は、その進化の過程における、一つの分岐点となるかもしれない。我々は、この機会を捉え、日本の進むべき「平和への道」を、より深く、より広い視野で、共に考えていく必要がある。その先にあるのは、単なる安全保障の強化ではなく、真の国際平和の実現であると信じたい。
国際平和への貢献、さらに力強く：防衛省・自衛隊、国連PKO等への協力体制を強化,防衛省・自衛隊
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