変化を恐れぬ「心の知能」こそ、公務員に求められる未来像
沖縄県が、来年度の県職員採用試験において、従来の知識偏重型の筆記試験に加え、「心の知能（EQ）」を測る適性検査を導入するというニュースに触れた。この一見、些細とも思える試験制度の変更は、公務員という仕事のあり方、そしてそれを支える人材育成の根幹を揺るがす、静かながらも革命的な一歩と言えるだろう。
長らく、公務員採用試験といえば、法律や行政学などの知識をどれだけ詰め込めるかが問われる筆記試験が中心であった。もちろん、専門知識は公務員業務遂行の礎である。しかし、複雑化し、予測不能な要素が増加する現代社会において、知識だけでは対応できない課題が山積しているのも事実だ。市民の多様なニーズに寄り添い、予期せぬ事態に冷静かつ柔軟に対応し、関係者と円滑なコミュニケーションを図りながら、より良い解決策を導き出す。これらの能力は、どれだけ参考書を読み込んでも、一夜漬けで身につくものではない。
「心の知能（EQ）」とは、感情を理解し、それを適切に表現・管理する能力、他者の感情を理解し、共感する能力、そしてそれらを基に人間関係を円滑に進める能力を指す。これこそが、まさに現代の公務員に不可欠な資質ではないだろうか。
例えば、災害発生時、パニックに陥る人々の声に耳を傾け、不安を和らげながら的確な指示を出す。高齢者や障がいを持つ方々と接する際、相手の立場に立ち、丁寧で温かい対応を心がける。部署内や関係機関との調整において、意見の対立を乗り越え、建設的な合意形成を図る。これらの場面において、知識の豊富さよりも、感情の理解力や共感力、そしてコミュニケーション能力こそが、問題解決の鍵となる。
沖縄県がこの適性検査を導入した背景には、こうした社会の変化への的確な認識と、未来を見据えた英断がある。これは、単なる採用試験の「加点」や「足切り」といった表面的な話ではない。公務員という仕事の「本質」が、知識の伝達から、人々の心に寄り添い、共感し、共に行動する「共創」へとシフトしていくことを、制度として明示しているのだ。
もちろん、適性検査の導入は、その公平性や評価方法の確立など、乗り越えるべき課題も少なくないだろう。しかし、変化を恐れず、公務員に求められる能力の幅を広げようとする試みそのものに、大きな意義がある。
この沖縄県の試みが、全国の自治体、そして国の行政機関にも波及し、公務員という仕事が、より人間味あふれる、そしてより効果的なものへと進化していくことを期待したい。国民一人ひとりの「心」に寄り添い、共に未来を築いていく。そんな革新的な公務員像が、この「心の知能」検査をきっかけに、現実のものとなることを信じている。
沖縄県職員（主査（心理））採用選考試験、最終合格者が決定！未来を担う心理職の活躍に期待！,沖縄県
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