マイナンバーカード、利便性向上への期待と懸念
マイナンバーカードが、さらなる利便性向上を目指し、行政手続きにおける「カード代替」の取り組みを進めているというニュースに接した。健康保険証との一体化、運転免許証との統合なども視野に入り、私たちの生活におけるマイナンバーカードの存在感は増していくことだろう。
国民一人ひとりの情報を一元化し、行政サービスの効率化を図るという目的は、現代社会において極めて重要であり、その推進自体は評価されるべきだ。煩雑な手続きが簡素化され、待ち時間が短縮されるのであれば、国民生活の質の向上に繋がることは疑いようがない。例えば、医療機関での受付や、各種行政窓口での本人確認がスムーズに行われるようになれば、日々の生活におけるストレスは軽減されるはずだ。
しかし、こうした利便性向上の裏側には、無視できない懸念も存在する。情報の集約は、利便性と表裏一体で、情報漏洩や不正利用のリスクを高める可能性も否定できない。個人情報という極めてセンシティブな情報を、一枚のカードに集約することの是非については、国民的な議論がさらに深められるべきだろう。
また、カードの普及と利用促進は、デジタルデバイド（情報格差）を拡大させる懸念もはらんでいる。高齢者やデジタル機器に不慣れな方々が、マイナンバーカードの活用から取り残され、行政サービスを受ける上で不利な状況に置かれることは避けなければならない。カードが「必須」となる場面が増えるにつれて、その重要性は高まるが、同時に「使えない」人たちへの配慮も不可欠となる。
マイナンバーカードの利便性向上は、あくまで国民一人ひとりの生活を豊かにするための手段であるべきだ。その実現のためには、技術的な進歩や制度設計だけでなく、国民の不安に寄り添い、丁寧な説明と十分な安全対策を講じることが何よりも重要となる。カードが「便利」になることと同時に、「安心」して利用できる環境が整うことこそが、本来目指すべき姿ではないだろうか。
マイナンバーカードがさらに便利に！「カード代替電磁的記録」利用サービス開始のお知らせ,デジタル庁
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