ニューヨーク州弁護士会、倫理規定改定は司法の信頼を損なう危険な一歩
ニューヨーク州弁護士会（NYSTCA）が、2025年9月4日付けで「The Recorder」紙に報じられた倫理規定の改定は、司法制度の根幹を揺るがしかねない、極めて懸念される動きである。今回の改定は、弁護士が訴訟や紛争において、事実と異なる主張を意図的に行うことを、一定の条件下で容認する方向に踏み込んだものと理解される。これは、法曹界が長年培ってきた倫理観、ひいては社会全体の司法に対する信頼を根底から覆しかねない、極めて危険な一歩と言わざるを得ない。
弁護士の最も基本的な責務は、依頼者の利益を最大限に守ることであると同時に、真実の探求に協力し、司法の公正さを担保することにある。今回検討されている改定は、この二つの責務のバランスを著しく崩壊させる恐れがある。依頼者の「利益」のために、事実と異なる主張を「戦略的に」行うことが許容されるのであれば、それはもはや「弁護」ではなく、単なる「欺瞞」の助長に他ならない。
「The Recorder」紙の報道によれば、この改定は「ある特定の状況下で」、事実と異なる主張を「戦略的に」行うことを容認するものだという。しかし、「ある特定の状況下」とは一体どのような状況なのか、その線引きは極めて曖昧であり、恣意的な運用を招く余地が大きい。また、「戦略的に」という言葉の裏には、真実を歪め、相手方を誤った方向に誘導しようとする意図が透けて見える。
司法制度は、国民の信頼の上に成り立っている。裁判官、検察官、そして弁護士が、それぞれの立場において誠実に職務を遂行し、公正な判断が下されるという信頼があってこそ、社会の秩序は維持される。今回のNYSTCAの動きは、この信頼を大きく損なうものである。もし、弁護士が平然と事実と異なる主張を行うようになれば、裁判そのものの意義が失われ、国民は司法に対して不信感を募らせるだけである。
もちろん、弁護士が依頼者の利益を最大限に守るべきであることは論を俟たない。しかし、それはあくまで「法」という枠組みの中での話であり、真実を捻じ曲げたり、嘘をついたりすることを意味するものではない。むしろ、真実を追求する過程で、依頼者に不利な事実が出てきたとしても、それをどのように法的に解釈し、弁護するというのが弁護士の本来の腕の見せ所であるはずだ。
今回のNYSTCAの改定案は、目先の依頼者の利益を優先するあまり、弁護士という職業が持つべき普遍的な倫理観、そして司法全体が守るべき真実と公正という価値観を、いとも容易く踏みにじろうとしているように見える。このような動きが、他の地域や国に波及することなく、慎重に、そして断固として食い止められることを強く願う。司法の信頼は、社会の生命線である。その信頼を傷つけるような改定は、断じて許されるべきではない。
ニューヨーク州弁護士会（NYSTCA NY）、2025年9月4日に「The Recorder」を公開！,NYSTCA NY
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