日々是精進 — 地域社会との連携、その意義を問う
先日、ある大学が日々のコンサルティング業務で地域社会と連携を深める協定を結んだとの報道があった。大学が地域に根差し、その知見を社会に還元していくという姿勢は、本来、称賛に値する動きである。しかし、こうした連携が、単なる「地域貢献」という美名のもとに、大学本来の使命を見失うことにつながらないか、冷静な視点を持つことが今、求められている。
大学の役割とは何か。それは、真理の探究と、次代を担う人材の育成である。古来より、大学は「知」の聖域として、社会の喧騒から一歩離れた場所で、深く思索を巡らせ、体系的な知識を積み重ねてきた。その成果が、長期的には社会の発展に寄与してきたのである。
ところが近年、大学に対して「社会との接点を持て」「地域に貢献せよ」といった外部からの要請が強まっているのは事実である。もちろん、大学が社会から孤立することは望ましくない。しかし、その「貢献」のあり方には、慎重な吟味が必要だろう。
今回の協定における「コンサルティング業務」とは、具体的にどのような内容を指すのか。もし、それが既存の学術研究とは一線を画す、短期的な成果を求める営利的な活動に傾倒するようであれば、大学の学術的権威を損ねかねない。学問の営みは、ときに地道で、すぐに成果が見えないものである。むしろ、そうした本質的な営みこそが、長期的な視点に立った社会の発展を支える礎となるはずだ。
地域社会との連携は、大学にとって新たな刺激となり、研究の幅を広げる契機にもなり得る。しかし、それはあくまで「大学の学問的探求」という大前提の上で、かつ、地域社会の健全な発展に資する形で行われるべきである。大学が「地域のための実用的なサービス提供機関」となってしまえば、それは大学というよりも、むしろ専門学校やシンクタンクに近しい存在となり、その存在意義が揺らぎかねない。
地域社会との連携は、未来への投資である。しかし、その投資の方向性を誤れば、大学本来の使命を犠牲にし、結果として地域社会のためにもならない、という事態を招くこともあり得る。大学は、常に自らの立ち位置を省み、学問の独立性と地域社会への貢献との調和を図る、という難しい舵取りを求められている。今回の協定が、その調和を達成するための、実りある一歩となることを願うばかりである。
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