財政投融資の未来を語る ～令和7年度の財政投融資に寄せて～
令和7年度の財政投融資計画が示され、その内容に改めて、我が国の未来を支える金融インフラとしての財政投融資の重要性を痛感している。少子高齢化、気候変動、DXの加速といった構造的な変化が不可避な時代において、財政投融資が担うべき役割は、これまで以上に多岐にわたり、かつ戦略的であることが求められている。
今回の計画では、経済安全保障の強化、グリーン・トランスフォーメーション（GX）の推進、そしてデジタル・トランスフォーメーション（DX）の加速といった、国家的な重要課題への重点的な配分が明確に打ち出されている。これは、単なる資金供給に留まらず、民間投資を呼び込み、新たな成長産業の創出を後押しするという、財政投融資ならではの「種まき」としての機能が期待されている証左であろう。
特に、経済安全保障の観点からの重点化は、サプライチェーンの強靭化や基幹技術の国内回帰を促す上で、極めて重要な意味を持つ。地政学リスクが高まる現代において、自国の経済基盤を盤石なものとすることは、国家存続の最前提である。財政投融資が、こうした戦略的な分野への大胆な投資を後押しすることで、我が国産業の競争力強化に繋がることを期待したい。
また、GXとDXの推進は、持続可能な社会の実現と新たな経済的価値の創造という、二つの側面を同時に追求するものである。再生可能エネルギーへの投資、脱炭素技術の開発支援、そしてデジタル基盤の整備など、財政投融資が果たすべき役割は大きい。これらの分野は、初期投資に巨額の資金を要する一方、成功すれば社会全体に大きな便益をもたらすポテンシャルを秘めている。民間のリスクマネーが及びにくい領域において、公的な資金が橋渡し役となることで、イノベーションの連鎖を生み出すことができるだろう。
一方で、財政投融資の運用においては、常に「効率性」と「透明性」が問われ続ける。限られた公的資金を、いかに効果的かつ公正に配分していくのか。その判断基準、そして実行プロセスにおける説明責任は、国民の信頼を得る上で不可欠である。今回の計画が、そうした議論をさらに深める契機となることを願う。
令和7年度の財政投融資は、変化の激しい時代において、我が国の未来を切り拓くための羅針盤となるべきものである。その設計図は、すでに示されている。あとは、この計画が着実に実行され、期待される効果を最大限に発揮できるよう、関係各機関の英知と努力が結集されることを期待する。我々業界も、この財政投融資の動向を注視し、その波に乗り、共に成長していく決意を新たにしたい。
財政投融資の未来を語る～令和7年度の財政投融資分科会議事要旨公開～,財務省
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