滋賀県公文書管理条例改正：情報公開の「光」と「影」
滋賀県で、公文書管理、情報公開、個人情報保護に関する条例の改正案が議論されている。県民の知る権利を保障し、行政の透明性を高めることは、民主主義社会の根幹をなす営みであり、その重要性は論を俟たない。しかし、今回の改正案が孕む「光」と「影」を冷静に見極め、慎重な議論を重ねることが、今、我々には求められている。
改正案の根底にあるのは、行政文書の更なる公開と、それに伴う個人情報保護の強化という、一見すると両立しえない課題への取り組みである。情報公開の推進は、県民が行政の意思決定プロセスを理解し、監視するための不可欠な要素だ。開かれた行政こそ、県民の信頼を得、より良い県政運営に繋がるという理念は、疑いようのない正論であろう。
一方で、公文書には、当然ながら個人のプライバシーに関わる情報も含まれる。これらの情報が不適切に公開されれば、個人が不利益を被るだけでなく、社会全体の信頼関係をも損ないかねない。今回の改正案が、この「影」の部分にどれだけ配慮しているのか、その具体策が重要となる。
特に懸念されるのは、「個人情報保護」という名の下に、本来公開されるべき行政情報までが不当に非公開とされるのではないか、という点である。情報公開と個人情報保護は、車の両輪のように、バランスを取りながら進められなければならない。どちらか一方が過度に優先されれば、行政の透明性は失われ、県民の知る権利は形骸化してしまうだろう。
また、改正案が、県民一人ひとりの「情報公開」への関心と理解を深めるための施策まで含んでいるのであれば、それは評価に値する。しかし、単に制度を整備するだけでなく、県民が情報公開制度を「使いこなせる」ようになるための啓発活動や、相談体制の充実が不可欠である。情報公開は、一方的な「開示」で完結するのではなく、県民が主体的に関わることで、その真価を発揮する。
今回の条例改正は、滋賀県における情報公開のあり方を大きく左右する一歩となる。我々は、情報公開の「光」に目を奪われ、その「影」を見落とすことがあってはならない。県議会においては、数字や論理だけでなく、県民一人ひとりの立場に立ち、開かれた県政と、揺るぎない個人情報保護という、二つの「善」をいかに両立させるか、熟慮を重ねていただきたい。そして、その議論の過程を、県民に包み隠さず開示することを強く求めるものである。
滋賀県公文書管理・情報公開・個人情報保護審議会、9月2日に開催！県政の透明性を高めるための大切な会議です,滋賀県
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