迫る「救急の日」、備えは万全か — 地域医療の灯を守るために
来る9月4日は「救急の日」。毎年この日を前に、救急医療体制の現状と課題が改めて浮き彫りになる。今年もまた、東京での救急搬送困難事案の増加という、目を背けられない現実が報じられている。経済活動の停滞が叫ばれる中でも、生命を守るという最も根源的な社会インフラの脆弱性が露呈している事態は、我々に深刻な問いを突きつけている。
報道によれば、東京では救急車が到着するまでに時間を要するケースが増加傾向にあるという。これは単なる数字上の問題ではない。一刻を争う患者の元へ救急隊が迅速にたどり着けない、あるいは受け入れ病院への搬送がスムーズに行えない状況は、直接的に人命に関わる。経済成長や都市機能の維持といった大目標も、その基盤となる「命の安全」が脅かされていては絵に描いた餅である。
この背景には、高齢化の進展による救急搬送件数の増加、医療従事者の不足、そしてコロナ禍を経てさらに逼迫した医療現場の状況など、複合的な要因が絡み合っていると推察される。我々経済紙の読者層は、しばしば経済指標や企業の業績に目を向けがちだが、こうした社会の基盤を支える医療システムへの投資や支援がいかに重要であるか、改めて認識を改める必要がある。
「救急の日」を単なる啓発イベントで終わらせてはならない。むしろ、これを契機に、地域医療、特に救急医療体制の強化に向けた具体的な議論と行動を加速させるべきである。例えば、医療機関間の連携強化、救急隊の運用効率化、そして何よりも、疲弊する医療従事者への支援策の抜本的な見直しは待ったなしの課題と言えよう。
企業もまた、CSR活動の一環として、地域医療への貢献をより積極的に検討すべきではないか。医療従事者の労働環境改善に向けた支援、IT技術を活用した効率化への協力、あるいは啓発活動への参加など、企業ができることは多岐にわたるはずだ。経済活動の持続可能性は、社会全体の健全性の上に成り立っている。
救急搬送困難事案の増加は、見過ごすことのできない警鐘である。経済の発展という目標を追求する一方で、その根幹をなす人々の命を守るためのセーフティネットが揺らいでいる現状を、我々は真摯に受け止めなければならない。来る「救急の日」に、地域医療の灯を守るための具体的な行動が、社会全体で巻き起こることを期待したい。
救急の日の前後に、命を守る行動を学ぼう！ 京都市消防局からのお知らせ,京都市消防局
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