揺らぐ「安心」の根幹 ～岩手県警の広報失態から見る、情報発信の「責任」～
岩手県警が「広報いわて」への情報提供において、年代を偽装するという前代未聞の失態を犯した。この事実は、単なる事務的なミスとして片付けるにはあまりにも重すぎる。報道によれば、警備関連のイベント告知において、本来は対象外となるはずの若年層を対象に含めるべく、年代設定を操作したという。これは、警察という、国民の安全と安心を守るべき組織の根幹を揺るがす行為と言わざるを得ない。
我々業界紙は、常に社会の「声」を拾い上げ、それを伝える使命を負っている。その伝達手段は、しばしば公的機関からの情報提供に依存する部分も少なくない。しかし、今回の岩手県警の事例は、その提供される情報そのものの信頼性、さらにはその情報発信の「意図」までをも疑わせるものである。
「広報」とは、単なる情報伝達ではない。それは、組織の在り方、理念、そして国民との信頼関係を築くための極めて重要なコミュニケーション手段である。特に、国民の生命と財産を守る警察組織においては、その情報発信の透明性と正確性は絶対条件と言える。今回の事案は、この「信頼」という名の、極めて繊細で、かつ強固でなければならない基盤に、大きな亀裂を入れたと言っても過言ではない。
なぜ、このような事態が起きたのか。背景には、社会の変化、あるいは地域社会との連携強化という、一見すれば肯定的な目標があったのかもしれない。しかし、その目標達成のために「手段を選ばない」という姿勢は、断じて容認されるべきではない。広報活動が、結果的に「情報操作」と受け取られかねない行為に及んだことは、警察組織全体の広報に対する姿勢、そして情報倫理そのものに、根本的な見直しを迫るものである。
我々業界紙も、公的機関からの情報提供が、時に限定的であったり、あるいは特定の意図を帯びている可能性も否定できない。だからこそ、常に批判的な視点を持ち、情報の真偽を検証し、多角的な視点から社会に伝える努力を怠ってはならない。しかし、今回のような、組織自らが「信頼」を裏切るような行為は、我々の本来的な使命遂行を、より困難なものにする。
岩手県警の今回の失態は、全国の警察組織、そして我々メディアを含む情報発信を行う全ての組織に、重い警鐘を鳴らしている。社会が求める「安心」とは、一体何によって支えられているのか。それは、いかに正確で、いかに誠実な情報発信ができるか、そして、いかに国民との信頼関係を築き、維持できるかにかかっている。
今回の事案を、単なる一地方の警察の不始末として終わらせず、情報発信の「責任」とは何か、そして「信頼」をいかに守るべきかという、社会全体で共有すべき議論の出発点としたい。揺らいだ「安心」の根幹を、今一度、しっかりと見つめ直す時期に来ている。
岩手県警がお届けする！「広報いわて 令和7年10月号」で、秋の安全・安心をさらに身近に！,岩手県警
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