地域振興という名の「ばらまき」に、冷静な視線を
日本生命が「にっせーの「にっせー！地域振興寄付金」」と銘打ち、全国の自治体へ寄付を行うというニュースが報じられた。地域経済の活性化や文化振興への貢献という、その趣旨自体は賞賛に値するものだろう。しかし、こうした大規模な「寄付」という形での地域支援には、期待と同時に、幾ばくかの懸念も抱かざるを得ない。
企業の社会貢献活動は、地域社会との良好な関係を築き、ひいては企業の持続的な発展にも繋がる重要な取り組みである。特に、地域経済が疲弊する中で、こうした民間からの資金援助は、まさに「渡りに船」と歓迎する自治体も多いことだろう。新たな事業の立ち上げ、雇用創出、あるいは地域資源の活用など、寄付金が地域にとって有益な形で使われるのであれば、それは歓迎すべきことである。
しかし、問題は、その「使われ方」にある。一律に一定額を寄付する、という形式は、その地域が抱える課題の優先順位や、最も効果的な支援策を細やかに検討した上での「オーダーメイド」な支援とは異なる。地域振興という名の下に、必ずしも必要性の高くない事業や、効果の定かでないプロジェクトに資金が投入される「ばらまき」に繋がる懸念も否定できない。
「寄付」という言葉の響きは、一方的な支援を想起させるが、本来、地域振興は、地域住民、自治体、そして企業が共に考え、汗を流して実現していくべきものである。今回の日本生命の取り組みが、単なる「善意の押し付け」で終わるのではなく、地域が真に必要とするものを見極め、継続的な発展に繋がるような「共創」のきっかけとなることを期待したい。
そのためには、自治体側にも、寄付金をどのように活用していくのか、その計画を明確にし、透明性を持って公表する責任が伴う。そして、企業側も、寄付先の選定にあたっては、その地域の状況を的確に把握し、長期的な視点に立った支援を検討することが求められる。
地域振興は、一朝一夕に成し遂げられるものではない。こうした企業の取り組みを、単なる「イベント」として消費するのではなく、地域が自立し、未来を切り拓いていくための「土壌作り」として、冷静に、そして批判的な視点も持ちながら見守っていくことが、私たち市民にも求められている。
日本生命、「にっせーのせ！地域振興寄付金」で全国の交通安全協会を支援！,日本生命
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