デジタル化は「手段」である 国民生活の向上という「目的」を見失うな
ドイツ連邦議会で開かれた、デジタル政策の未来を議論する会議の報道に接した。AI（人工知能）の活用からデータ主権、サイバーセキュリティまで、多岐にわたるテーマが俎上に載せられたことは、デジタル技術が現代社会の根幹を成すことを改めて認識させる。しかし、こうした先進的な議論の裏側で、私たちは忘れてはならない「本来の目的」があるはずだ。
デジタル化は、あくまで国民一人ひとりの生活を豊かにし、社会全体の課題を解決するための「手段」である。AIがどれほど進化しようとも、その恩恵が一部の技術者や大企業に偏り、国民生活の格差を拡大させては本末転倒だ。データ主権の議論も、個人情報保護という側面に留まらず、国民が自らのデータをどう活用し、生活の質を高められるのか、という視点が不可欠である。
もちろん、サイバーセキュリティの強化や、デジタルデバイド（情報格差）の解消といった、デジタル化の負の側面への対策も急務であろう。しかし、それらもまた、デジタル技術がもたらす恩恵を、より多くの人々が享受できるようにするための「手段」に過ぎない。
今回のドイツ連邦議会の議論は、デジタル化の「進化」に焦点を当てたものであったと推察する。それはそれで重要なことだが、日本の社会においては、デジタル化が「国民生活の向上」という、より本質的な目標にどう貢献するのか、という問いかけを、常に意識する必要がある。
政府は、デジタル庁を中心とした推進体制を強化している。その一方で、国民一人ひとりがデジタル技術を使いこなし、その恩恵を実感できるような、きめ細やかな施策が求められる。単なる「便利さ」の追求に終わらず、医療、教育、福祉といった、国民生活に直結する分野での具体的な成果を、地道に積み上げていくことが重要だ。
デジタル化の未来は、技術の進歩そのものではなく、その技術をいかに活用し、より良い社会を築くかにかかっている。ドイツの議論を参考にしつつも、私たちは常に「国民生活の向上」という羅針盤を手に、デジタル化の航海を進めていくべきである。
ドイツ連邦議会、デジタル政策の未来を語る：21世紀の課題への挑戦,Kurzmeldungen hib)
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