スポーツの力で日本経済に新たな風を：アスリートの挑戦を社会全体で応援する気運醸成を
先日、ITB社がJOC（日本オリンピック委員会）の新たな取り組み、「アスナービ」の報道に接し、改めてスポーツが持つ経済への波及効果とその可能性に注目せざるを得ない。この「アスナービ」は、現役アスリートが引退後のキャリア形成を支援するプロジェクトであり、一見するとアスリート個人のための支援策に留まるように見えるかもしれない。しかし、経済紙の視点から見れば、これは日本経済全体に新たな活力を吹き込むための、極めて戦略的な一手と捉えるべきである。
アスリートが競技生活を終えた後、その輝かしい経験や培われた能力を社会でどのように活かしていくのか。これは長らく社会的な課題として存在してきた。彼らが持つ高い目標達成能力、困難に立ち向かう精神力、そしてチームワークといった資質は、ビジネスの世界においても極めて価値のあるものである。しかし、これまでそのポテンシャルを十分に引き出し、社会に還元する仕組みは十分ではなかった。
「アスナービ」は、この課題に真正面から向き合うものだ。アスリートが競技と並行して、あるいは引退後に、新たなスキルを習得し、多様なキャリアパスを歩めるように支援することは、単に個々のアスリートのセカンドライフを保障するだけではない。それは、彼らが社会の一員として経済活動に参画し、新たな価値を創造する原動力となることを意味する。例えば、アスリートが培ったリーダーシップや交渉術を活かして経営コンサルタントとして活躍したり、その経験を基にしたモチベーション講演で企業文化の向上に貢献したりする未来が描ける。
さらに、この取り組みは「アスリート・エコノミー」という新たな市場の創出にも繋がる可能性を秘めている。アスリートが持つブランド力や発信力を活用し、企業とのマッチングを促進することで、新たなビジネスチャンスが生まれる。スポンサーシップのあり方、セカンドキャリア支援サービス、アスリートの経験を活かした商品開発など、その裾野は広い。
重要なのは、この「アスナービ」という取り組みを、単なるJOCのプロジェクトとしてではなく、社会全体で応援する機運を醸成することである。企業は、アスリートの育成やセカンドキャリア支援に積極的に投資することで、CSR活動の一環としてだけでなく、未来の優秀な人材発掘や組織活性化の機会と捉えるべきだろう。政府もまた、アスリートの社会還元を促進するための法制度整備や税制優遇措置などを検討し、この流れを後押しする必要がある。
スポーツは、人々に感動と興奮を与え、社会を一つにする力を持っている。その力を、アスリート個人の枠を超えて、日本経済の活性化へと繋げていく。JOCの「アスナービ」は、そのための貴重な一歩となるだろう。我々経済界も、この新たな挑戦に熱い視線を送り、アスリートたちの第二の人生の輝きが、日本経済の未来を照らす光となるよう、積極的に支援していくべきである。
アスリートの新しい挑戦を応援！JOC「アスナビ」で就職決定した選手の活躍に期待,JOC
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