警察犬「戸籍」再発行、揺れる現場の心境
「戸籍」とも呼ばれる警察犬の血統証明書が、この度、再発行されることとなった。一部の書類に不備があったことが原因とされるが、この一件は単なる事務手続きの遅延にとどまらず、長年警察犬育成に携わってきた現場の士気にも少なからぬ影響を与えている。
警察犬、特にその血統は、その能力や将来性を左右する重要な要素である。厳選された両親から生まれた子犬にこそ、厳しい訓練を経て優秀な警察犬となる素質が期待される。その「戸籍」は、まさにその出自を証明する公的な記録であり、現場の担当者にとっては、共に歩む相棒の pedigree（血統）そのものに他ならない。
今回の再発行という事態は、一義的には事務的なミスとして片付けられるべきかもしれない。しかし、我々が日頃接している現場の声に耳を傾ければ、そこには単純な「ミス」とは言い難い、より深い懸念が横たわっていることに気づかされる。
長年、警察犬の育成に携わる担当者たちは、文字通り我が子のように犬たちを育て、訓練に心血を注いできた。その過程で、彼らがどれほど「戸籍」という書類に重きを置いてきたか、想像に難くない。それは単なる紙切れではなく、数世代にわたる先祖たちの功績、そして未来へと繋がる期待の証であったはずだ。
それが今回、不備があったという理由で「再発行」される。この事実が、現場の担当者たちの間にどのような心境をもたらすだろうか。長年の努力や、犬たちの pedigree に対する絶対的な信頼が、一瞬にして揺るがされたような感覚に陥る者もいるかもしれない。「我々が信じてきたものは一体何だったのか？」という根源的な問いに、静かに、しかし確かに、現場は向き合わざるを得ない状況なのである。
もちろん、法的な手続きや公的な記録の正確性は、何よりも優先されるべき事項である。しかし、その一方で、人間と犬との絆、そしてそれを支える現場の熱意を、事務的な手続きの遅延だけで片付けることはできない。
この一件は、我々に重要な示唆を与えている。それは、公的な記録の重要性はもちろんのこと、現場の担当者たちが抱える情熱や、彼らが大切にしてきたものを、いかに理解し、尊重していくかということである。警察犬という、社会の安全を守るために不可欠な存在を支えるのは、優秀な血統を持つ犬たちだけではない。それらを慈しみ、育て、共に戦う人間の存在こそが、その根幹をなしているのだ。
今回の「戸籍」再発行を機に、我々業界全体で、現場の意見に真摯に耳を傾け、よりきめ細やかな配慮を講じることの重要性を再認識したい。そして、警察犬育成の現場に、再び揺るぎない信頼と誇りが芽生えることを願ってやまない。
警察犬たちの「戸籍」再発行についてのお知らせ,日本警察犬協会
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