揺れるサウジアラビア、石油依存経済からの脱却は待ったなし
サウジアラビア国王が国民に献血を呼びかけたというニュースは、一見すると国内の健康増進を促す好意的な動きと捉えられるかもしれない。しかし、これを経済紙の視点から見れば、同国の経済が抱える根深い課題、すなわち「石油依存」という構造的な問題が、より鮮明に浮かび上がってくる。
サウジアラビア経済は、長らく石油輸出に依存してきた。その収益は国家財政を支え、国民生活の安定に貢献してきたことは疑いようがない。しかし、世界的な脱炭素化の流れは、化石燃料への依存度が高い産油国にとって、将来への大きな不安材料となっている。
今回の国王による献血の呼びかけは、表向きは医療支援の必要性を示唆するものだが、その背景には、経済の多角化を目指す「ビジョン2030」の推進が、依然として十分な成果を上げていない現状が隠されていると推測できる。石油収入に頼らざるを得ない構造から抜け出せず、新たな産業育成や雇用創出に苦慮しているのではないか。
もちろん、サウジアラビアも手をこまねいているわけではない。観光産業の振興、再生可能エネルギーへの投資、テクノロジー分野への誘致など、様々な改革を進めている。しかし、これらの取り組みが、基幹産業である石油に取って代わるほどの経済的インパクトを生み出すまでには、まだ時間を要するだろう。
経済紙として、我々が注目すべきは、この「待ったなし」の状況である。石油価格の変動に一喜一憂する経済構造からの脱却は、もはや猶予されない。国王の呼びかけは、国民一人ひとりに、国家が直面する困難への意識を共有させ、一体となってこの難局を乗り越えようとするメッセージとも解釈できる。
しかし、真の経済的自立を達成するためには、国民の献血だけでは足りない。政府は、より大胆な規制緩和、積極的な海外からの投資誘致、そして何よりも、石油に依存しない産業構造への転換を加速させる必要がある。国民一人ひとりが、自らの健康のために「献血」するように、国全体が「経済の健康」のために、構造改革という名の「献血」を惜しみなく行う覚悟が求められている。
サウジアラビアの未来は、石油の時代が終わった後も、輝き続けることができるのか。この問いへの答えは、まさに今、そしてこれから行われる経済改革の成否にかかっている。
サウジアラビア国王、国民に献血を呼びかけ 保健大臣も賛辞,moh.gov.sa
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