異次元のインフレ、見えぬ出口 「普通」が遠のく日本経済
2025年7月、スペインの消費者物価指数（CPI）は前年同月比で驚異の6.7％上昇。この数字を前に、日本の我々は「他人事」と片付けられるだろうか。いや、むしろこのスペインの体験は、我々が直面しつつある、あるいはこれから直面するであろう未来の縮図として、静かに、しかし確実に警鐘を鳴らしている。
「インフレは一時的だ」「我々にはデフレ脱却のノウハウがある」。こうした楽観論は、もはや砂上の楼閣と化しつつある。スペインのCPI上昇率が示すのは、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱、そして地政学的なリスクといった、単一の要因では説明できない複合的な圧力である。そして、これらの要因は、グローバル化が進んだ現代において、一国だけに留まるものではない。
我々が「普通」だと信じていた経済の均衡が崩れ始めている。かつて、多少の物価上昇は経済成長の証と捉えられた時代もあった。しかし、今回のスペインの事例、そして我々が肌で感じ始めている物価の重みは、単なる成長の兆しではない。それは、生活の基盤を揺るがし、将来への希望を蝕む「異次元」のインフレの足音だ。
この状況下で、政府や中央銀行に求められるのは、現状を正確に直視し、国民に開かれた対話を行うことである。これまでのような、経済学の専門用語で彩られた、どこか遠い世界の出来事のように語られる説明では、国民の不安に寄り添うことはできない。なぜインフレが起こっているのか、その根本原因は何なのか。そして、この難局を乗り越えるために、国民一人ひとりが何をすべきなのか。具体的な、そして切実な言葉で語りかける必要がある。
さらに、このインフレは、単にモノの値段が上がるという現象に留まらない。それは、我々の「消費行動」そのものにも変革を迫っている。これまで当たり前のように享受できていた「安価で多様な選択肢」は、その姿を変えつつある。節約志向はもはや選択肢ではなく、生き残りのための必須スキルとなるだろう。
しかし、我々は絶望すべきではない。スペインの事例が示すのは、困難な状況であっても、人々は適応し、新たな価値観を見出していく力を持っているということでもある。持続可能な消費、地域経済の活性化、そして共有経済の発展。これらの動きは、インフレという逆風の中で、むしろその重要性を増していくはずだ。
我々一般紙の責務は、この「普通」が失われた時代において、国民が正しい情報に基づき、最善の選択をするための羅針盤となることだ。スペインの数字は、我々への警告であると同時に、未来への示唆でもある。この異次元のインフレという嵐の中、日本経済の、そして我々自身の「普通」とは何なのか。その問いに向き合い、新たな時代を生き抜くための道筋を、共に探っていかなければならない。
スペインの消費者物価指数：2025年7月、インフレはどのように動いた？,The Spanish Economy RSS
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