災害時こそ pets を、という美談に隠された「公」の責任
昨今の自然災害の頻発化・激甚化は、我々国民の心に深い不安を刻みつけている。そんな状況下、「災害時こそ愛するペットと共に」という温かいメッセージが、ある報道によって広く共有されている。避難所でのペットとの共生に理解を示す動きや、ペット同伴可能な避難所の整備といった動きは、確かに動物愛護の観点からは評価されるべきだろう。しかし、こうした「美談」の裏に潜む、より根源的な課題から目を背けてはならない。
そもそも、災害時の避難という事態は、極めて深刻な公的責任が問われるべき局面である。国民の生命と安全を確保することは、国家および地方自治体の最たる責務に他ならない。それにもかかわらず、一部の報道が、まるで個人の「愛」や「感傷」によって災害時の困難が乗り越えられるかのような論調を醸成しているとすれば、それは極めて短絡的であり、無責任と言わざるを得ない。
ペットとの共生を謳うこと自体は否定しない。しかし、それはあくまで「余裕」のある状況下での話である。災害発生時、最も優先されるべきは、避難者の生命線である食料、水、医療、そして安全な住居の確保である。そこに、ペットという新たな「保護対象」を加えることは、資源の配分において、必然的に本来保護されるべき人々のニーズを圧迫する可能性を孕んでいる。
「ペットも家族」という感情論は理解できる。しかし、公的な支援体制というものは、感情論だけでは成り立たない。限られたリソースの中で、誰に、どのように、どれだけ支援を届けるのか。そこには、冷静かつ合理的な判断が不可欠である。ペットを連れて避難する人々への配慮も重要であるが、それはあくまで、避難者全体の福祉を損なわない範囲での、公的な「サービス」として提供されるべきものではないか。
今回の報道は、災害対策における「公」の役割を矮小化し、個人の善意や感情に依存する危険な風潮を助長しかねない。我々は、災害時におけるペットとの共生という、一見すると温かい話題に安易に飛びつくのではなく、その背後にある「公」の責任の重さを再認識する必要がある。
災害に強い国づくり、そして、いかなる状況下でも国民一人ひとりの生命と尊厳が守られる社会の実現こそが、我々が真に目指すべき国家の姿である。そのためには、感情論に流されることなく、公的な責任を厳格に果たしていく覚悟が、政府にも、そして我々国民にも求められているのである。
災害時にも愛するペットと安心を！「9月ペット防災セミナー」開催のお知らせ,日本レスキュー協会
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