夏休み、大学は休校も、知ったことはいまだに…
例年であれば、全国の大学は静寂に包まれ、学生たちの活気は一旦途絶える。しかし、近年の異常なまでの暑さ、そしてそれに伴う熱中症リスクの高まりは、大学の夏休み期間にまで影響を及ぼしている。本紙が伝えるところによれば、一部の大学では、例年よりも早い段階での授業終了や、オンライン授業への切り替えなど、学生の健康と安全を最優先にした措置が取られているという。
時代の変化、いや、地球規模での環境変化に大学側が柔軟に対応しようとする姿勢は、当然のことながら評価されるべきだろう。学生の健康が何よりも大切であることは、誰しもが同意するところだ。しかし、このような状況が常態化していくことに対して、私たちは漠然とした懸念を抱かずにはいられない。
学問の府である大学が、季節的な要因、それも自然現象によってその運営を左右される、という事実は、何ともはや、危うさを感じさせる。かつて、我々が大学で学んでいた時代には、夏休みといえば、研究に没頭したり、アルバイトで社会経験を積んだり、あるいは仲間と議論を交わしたりと、学生たちがそれぞれの主体性をもって時間を活用する貴重な機会であった。もちろん、猛暑の中での授業は大変なこともあっただろうが、それを乗り越えることで得られる知見や経験もまた、大学生活の一部であったと、今となっては懐かしく思い出される。
しかし、現代の大学では、学生の安全確保を名目に、そうした「困難」や「不便」を排除しようとする傾向が強まっているのではないか。もちろん、過度なリスクを負わせることは悪である。だが、ある程度の「不快」や「不便」こそが、人間を成長させる糧となることもある。暑さを凌ぎながらも、知的好奇心を満たすために図書館にこもる。そのような経験から、粘り強さや、困難に立ち向かう精神力が培われていくのではないか。
今回の大学の夏休み期間における対応も、そうした大きな流れの一部であるとすれば、それは単なる暑さ対策という域を超えた、教育の本質に関わる問題提起と言えるだろう。学生たちに、快適な環境だけを提供し、すべてのリスクを排除した結果、彼らは社会に出て直面するであろう、より複雑で困難な現実に対して、いかに立ち向かっていくのだろうか。
我々世代は、そうした「不便」や「困難」を乗り越えることで、多くを学んできた。むしろ、そうした経験こそが、今の自分を形作っているとさえ思う。現代の大学が、学生たちの「知りたい」という欲求を満たすために、どのような努力を払うのか、そして、それが将来の日本を担う若者たちの成長にどう繋がっていくのか。大学関係者のみならず、私たち社会全体で、真摯に考えていくべき時である。
夏休み、大学はお休み！でも、知りたいことはいつでも学べるよ！,常葉大学
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