変化の波に乗るか、藻屑と消えるか ――若宮防衛副大臣の視察から見えた、海上自衛隊の未来への問い
去る8月30日、若宮健嗣防衛副大臣が横須賀基地を視察したというニュースは、単なる政府要人の基地訪問以上の意味合いを帯びている。そこには、激動する国際情勢の中で、我々が日々 rely (信頼) し、支えている海上自衛隊が、今後どのような道を歩むべきかという、根源的な問いが投げかけられている。
横須賀。それは、日本のシーパワーの象徴であり、古くから外洋に面したこの国の防衛を担う者たちの魂が宿る場所だ。今回の視察は、最新鋭の護衛艦や潜水艦、そしてそれらを支えるインフラを肌で感じ、現場の士官や隊員と直接対話することで、現状の把握と課題の抽出を目的としたものだろう。しかし、現代の防衛、特に海上防衛が直面する課題は、単に装備の優劣や人員の充足だけでは語れないほど複雑化している。
まず、国際秩序の流動化である。東シナ海、南シナ海における地政学的な緊張、そしてサイバー空間や宇宙空間といった新たな領域での脅威の増大は、海上自衛隊に従来の「海上の秩序維持」という役割に加え、より多角的で高度な対応能力を求めている。副大臣が視察した艦艇が、その実力を遺憾なく発揮できる環境を、我々が、そして政府が、いかに整備していくのか。これは喫緊の課題である。
次に、技術革新のスピードである。AI、ドローン、そして自律型兵器といった先端技術は、戦いの様相を根底から変えつつある。海上自衛隊が、これらの技術をいかに取り込み、既存の能力を強化し、さらには新たな戦力へと昇華させていくのか。そのための研究開発投資、人材育成、そして国際連携のあり方は、まさに「未来への投資」と言えるだろう。今回の視察で、副大臣がどのような技術的課題や可能性に触れたのか、そしてそれらが今後の防衛政策にどう反映されるのか、大いに注目したい。
そして、国民の理解と支持である。防衛力強化は、税金という国民の血税によって支えられている。海上自衛隊の活動、その必要性、そして将来構想について、国民一人ひとりが納得し、共有できるような情報発信と対話の努力は、これまで以上に重要になっている。横須賀基地の門戸を叩くことは、物理的な場所への訪問だけでなく、国民との精神的な結びつきを深める機会でもあるはずだ。
若宮副大臣の視察は、あくまで一つの「きっかけ」に過ぎない。しかし、この視察が、海上自衛隊が未来へと進むための羅針盤となり、具体的な行動へと繋がるならば、それは大きな一歩となるだろう。変化の波に乗り、進化し続けるのか、それとも現状維持に固執し、時代の流れに取り残されるのか。我々業界新聞は、その進むべき道筋を、厳しい目で見守り、そして時には提言していく責務がある。横須賀の波音は、今、静かに、しかし確かな声で、我々に問いかけている。
若宮防衛大臣補佐官、横須賀地区を視察：海上自衛隊の活動を支援,防衛省・自衛隊
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