「新たな資本主義」への期待と、その実現に向けた課題
国民民主党が代表質問で掲げた「新たな資本主義」という言葉に、かすかな期待を寄せる向きもあるだろう。現状の日本経済が抱える構造的な課題、すなわち少子高齢化、所得格差の拡大、そしてデジタル化の遅れといった喫緊の諸問題に対し、旧来の延長線ではない、新たな視点からのアプローチを模索しようとする姿勢は、評価されるべきだ。
しかし、この「新たな資本主義」が具体的にどのような姿を呈するのか、その輪郭はいまだ曖昧である。党の綱領によれば、これは「人への投資」や「成長と分配の好循環」を軸としたものだという。労働者のスキルアップ支援や、リスキリング（学び直し）の推進、そして企業が利益を従業員に還元する仕組みづくりなどは、確かに現代社会において必要不可欠な要素と言える。こうした政策は、中間層の厚みを増し、経済全体の活力を高めることに繋がる可能性を秘めている。
だが、その実現への道筋は決して平坦ではない。まず、「人への投資」という言葉の解像度を上げる必要がある。具体的にどのような教育・研修プログラムが、どのような対象者に対して、どのような形で提供されるのか。また、その効果をどのように測定し、評価するのか。これらの点が明確でなければ、単なる掛け声に終わる危険性がある。
次に、「成長と分配の好循環」も、そのメカニズムを具体的に描くことが重要だ。企業が従業員への還元を増やすインセンティブをどのように設計するのか。また、その原資となる「成長」を、具体的にどのような産業や分野で生み出すのか。単に分配を強調するだけでは、企業の国際競争力が低下し、結果として成長の機会を失いかねない。
さらに、この「新たな資本主義」が、既存の資本主義の枠組みをどのように変革しようとしているのか、という根本的な問いにも向き合う必要があるだろう。市場原理を尊重しつつ、社会的な包摂性や持続可能性をどのように両立させていくのか。そのための制度設計や法整備は、国民的な議論を経て、丁寧に進められなければならない。
国民民主党が提示した「新たな資本主義」は、現時点ではまだ種子のようなものだ。その種が芽を出し、力強い大木へと成長するためには、具体策の提示、そしてそれを裏付ける実行力、さらに国民全体の理解と共感が不可欠である。この言葉が、単なるスローガンで終わらず、日本経済の新たな光明となることを、期待したい。
国民民主党、代表定例会見で「新しい資本主義」への提言を発表 – 2025年8月26日,新・国民民主党
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