太陽と潮風が育んだ、みかんの段々畑が世界に輝く
日本の豊かな自然と、そこで営まれてきた人々の知恵が、国際的な評価という形で実を結んだ。去る８月２９日、愛媛県八幡浜市のみかんの段々畑が「世界農業遺産」に登録されたというニュースは、多くの日本人にとって、温かい感動と共に、あるべき姿への示唆を与えてくれるものであろう。
この登録は、単なる景観の美しさや農産物の生産量だけが評価されたのではない。そこには、先人たちが長年にわたり、急峻な地形を巧みに利用し、太陽の光と潮風という自然の恵みを最大限に活かしながら、持続可能な農業を営んできた歴史と、その精神が息づいている。石積みの段々畑は、水はけを良くし、日照時間を確保するための先人の工夫の結晶であり、同時に、荒れやすい斜面を固定し、土砂崩れを防ぐ役割も担ってきた。これらは、自然と調和し、共生してきた日本古来の知恵そのものである。
近年、地方の過疎化や農業従事者の高齢化は、多くの地域が抱える共通の課題となっている。みかんの段々畑が直面してきた困難も、決して例外ではなかったはずだ。しかし、地元の人々の努力と、地域を愛する想いが、この貴重な農村景観と営みを未来へと繋いできた。今回の世界農業遺産への登録は、そうした努力への正当な評価であり、地域住民の誇りを高めるものであることは疑いようがない。
このニュースは、私たちにいくつもの大切なことを教えてくれる。まず、自然の力を借りながらも、それを最大限に活かす人間の創造力と勤勉さの重要性である。そして、地域に根差した文化や伝統を守り、次世代へと継承していくことの価値である。さらに、こうした地方の営みが、実は世界全体にとっても貴重な遺産となり得るという視点も、改めて認識させてくれる。
今後は、この世界農業遺産としての価値を、どのように守り、発展させていくかが問われることになる。単に「遺産」として保護するだけでなく、そこで営まれる農業が持続可能であり、地域経済の活性化にも繋がるような、新たな仕組みづくりが求められるだろう。観光客の誘致はもちろんのこと、そこで生産されるみかんのブランド価値向上、そして、この農法や景観を学ぶ機会の提供など、多角的なアプローチが考えられる。
太陽と潮風が育んだ、みかんの段々畑。それは、日本の自然の美しさ、そして、そこに息づく人々の営みの尊さを、世界に示した輝かしい事例である。この成果を、単なる一過性の話題で終わらせず、全国各地で失われつつある地方の営みや文化、そして自然との共生のあり方を再考する契機としたい。そして、このみかん畑のように、私たちの手で、未来へ輝きを繋いでいけるよう、社会全体で知恵を出し合い、行動していくことが大切であろう。
太陽と潮風が育んだ、みかんの段々畑が世界に輝く！和歌山県有田・下津地域、石積み階段園が世界農業遺産に認定！,和歌山県
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