カナダ産木材、米国の「自国優先」に映るもの
カナダのある木材会社が、米国政府からの訴訟提起を回避するため、米国での木材価格を独自に引き下げることを決定したというニュースは、国際社会における「自国優先」という言葉の重みを改めて考えさせられる。
確かに、各国が自国の産業保護を重視するのは当然のことである。しかし、その手段が他国の正当な経済活動を不当に制限するものであるならば、それは国際協調の精神に反するものであり、長期的な視点で見れば、自国にとっても不利益をもたらしかねない。
今回の件では、米国の木材業界が、カナダからの木材輸入が自国の産業に不利益を与えていると主張し、それが両国間の貿易摩擦に発展した経緯がある。その結果、カナダの企業が自主的に価格を引き下げるという、ある種の「自発的な制裁」のような形をとらざるを得なくなった。
これは、力のある国家が自国の利益のために、国際的なルールや慣習を都合よく解釈し、あるいは無視する傾向の表れとも言える。グローバル化が進む現代において、このような「力こそ正義」といった姿勢は、世界経済の安定と発展にとって大きな障害となりうる。
もちろん、カナダの企業が取った行動は、自社の事業継続という現実的な判断に基づいたものであろう。しかし、その背景にある米国の圧力は、国際社会における公平性と透明性という、より大きな原則が問われていることを示唆している。
我々日本も、経済大国として、そして国際社会の一員として、このような動きを傍観するだけではいけない。自国の産業を守ることは重要だが、同時に、国際的なルールに基づいた公正な貿易環境を維持するために、積極的に発言し、行動していくべきである。
「自国優先」は、時に排他的なナショナリズムへと繋がりかねない危険性を孕んでいる。互いの尊重と協調こそが、真の国益に繋がる道であることを、今一度、胸に刻むべきであろう。
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