期待の2ndアルバム『MUSE』、LP限定リリースに寄せて—— 音楽体験の「特別さ」を問い直す
BTSのジミンが、待望のセカンドフルアルバム『MUSE』をリリースするというニュースが、世界中のARMYを熱狂させている。しかし、そのリリース形態として、LP盤が限定で販売されるという情報も同時に飛び込んできた。このニュースは、単なる新譜のリリースにとどまらず、私たちが音楽とどのように向き合い、その価値をどう見出していくのか、という根本的な問いを私たちに投げかけているのではないだろうか。
「限定」という言葉には、抗いがたい魅力がある。それは、希少性、所有欲、そして何よりも「特別」であることへの証。LP盤というアナログメディアは、その魅力をさらに増幅させる。デジタルデータが瞬時に世界中を駆け巡る現代において、レコード盤に針を落とし、そこに刻まれた音に耳を澄ますという行為は、ある種の儀式めいた響きさえ持つ。そこには、データ再生とは異なる、温かみのある音質や、ジャケットのアートワークを手に取る tactile な体験、そして「所有している」という実感がある。
もちろん、今回のLP限定リリースが、ジミンの音楽へのこだわりや、アートとしての音楽への敬意の表れであることは想像に難くない。そして、熱狂的なファンの間では、この「特別さ」こそが、アルバムへの愛情を深める要素となるだろう。しかし、学生新聞という立場から、私たちはもう少し広く、この現象が示唆することに目を向ける必要がある。
音楽が、より手軽に、より安価に、そしてより自由に享受できるようになった時代。ストリーミングサービスは、私たちの音楽ライブラリを無限に広げ、かつては想像もできなかったような多様な音楽との出会いを可能にしてくれた。それは紛れもない恩恵であり、音楽を愛する者にとって、かつてないほど豊かな時代である。
一方で、その「手軽さ」や「自由さ」は、音楽の価値を希薄にしてしまわないだろうか。無限に供給される情報の中に埋もれてしまう「名盤」や「隠れた名曲」。かつては、アルバム一枚をじっくりと聴き込むという体験が、それ自体で一つのイベントであった。しかし、今はプレイリストを次々と変え、数秒で曲をスキップすることも容易だ。
今回の『MUSE』のLP限定リリースは、このような状況へのアンチテーゼとも言えるかもしれない。音楽を「消費」するのではなく、「体験」として、そして「所有」するものとして捉え直すことで、その価値を再確認させようとしているかのようだ。それは、音楽を愛する者にとって、やはり「特別」な瞬間や体験を求めることへの、ある種の渇望の現れでもあるのだろう。
もちろん、すべての音楽がLPでリリースされる必要はないし、それが唯一の音楽の楽しみ方であるとも思わない。しかし、こうした「限定」や「特別」なリリース形態が、私たちが音楽にどのように向き合うべきか、そして音楽が私たちにとってどのような意味を持つのかを考えるきっかけを与えてくれることは間違いない。
ジミンの『MUSE』が、ARMYの心に深く響き渡ることを願う。そして、このアルバムをきっかけに、私たち一人ひとりが、自分にとっての「音楽の体験」や「音楽の価値」について、改めて考えてみる機会となれば幸いだ。音楽は、単なる音の羅列ではなく、私たちの感情や記憶と結びつき、人生を豊かに彩る「体験」そのものなのだから。
BTS ジミン、待望の2ndアルバム『MUSE』がLPで限定リリース決定！HMVが先行公開,HMV
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