待機児童問題、待ったなしの「待機」からの脱却を
少子化が叫ばれる一方で、都市部を中心に保育所への入所を待つ子供たちの列が依然として解消されないという、この国の矛盾を改めて突きつけるニュースが舞い込んできた。2025年4月1日現在、滋賀県において「保育所等入所待機児童数」がゼロになったという報道である。一見、喜ばしいニュースのようにも聞こえるが、経済紙の視点から見れば、これは単純な「達成」ではなく、むしろ「課題の転換」と捉えるべきである。
滋賀県で待機児童がゼロになった背景には、様々な要因が複合的に作用しているだろう。人口動態の変化、保育施設の拡充、そして地域社会の努力などが考えられる。しかし、この「ゼロ」という数字だけを見て、すべてが解決したと安堵するのは早計である。むしろ、ここからが本番なのである。
なぜなら、待機児童問題の解消は、あくまで「社会が子供を預かる機能」という、いわば「守りの姿勢」の成功に過ぎないからだ。真の課題は、この「預かる機能」を起点として、いかにして子供たちの健やかな成長を育み、それを支える親たちの社会参加を促進し、ひいては地域経済の活性化へと繋げていくか、という「攻めの姿勢」へと転換できるかどうかにかかっている。
滋賀県の例は、一つのモデルケースとなりうる。しかし、全国的な視点で見れば、待機児童問題は依然として多くの地域で深刻な課題として横たわっている。そして、もし仮に全国で待機児童がゼロになったとしても、そこで立ち止まるわけにはいかない。むしろ、そこからが「質の向上」という、より高度な挑戦の始まりとなる。
保育の質、保育士の待遇改善、子育て支援の充実、そして多様な働き方を支えるための柔軟な保育サービスなど、課題は山積している。これらの課題を解決することは、単に「子供を預ける場所」を確保することにとどまらない。それは、女性の社会進出を阻む壁を取り払い、少子化に歯止めをかけ、ひいては日本経済の持続的な成長を支えるための、不可欠な投資なのである。
経済成長が鈍化し、少子高齢化が深刻化する中で、子供たちは将来の日本を担う宝であり、そしてそれを生み育てる親たちは、経済活動の担い手でもある。待機児童問題の解消は、この両者を支えるための基盤整備に他ならない。
滋賀県の「ゼロ」を、単なる数字の達成で終わらせてはならない。それは、社会全体で「待機」という言葉から脱却し、子供たちの未来、そして日本の未来のために、より積極的で、より質の高い「育ち」を支えるための、新たなスタートラインとなるべきである。国、自治体、そして企業、地域社会、それぞれの主体が連携し、この「待機」からの脱却を、真の「育ち」の支援へと繋げていく戦略が、今こそ求められている。
2025年4月1日現在の滋賀県保育所等入所待機児童数、公表！,滋賀県
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