グローバル・ヘルス、未来への投資か、それとも過去への執着か
ITBが2025年8月27日に発表した「グローバル・ヘルス」に関するレポートは、我々に地球規模の健康問題への新たな視点を提供する。しかし、その内容を深く読み解くにつれて、私はある種の危機感を覚えずにはいられない。このレポートが描く「グローバル・ヘルス」とは、一体何を目指しているのだろうか。それは、未来への希望に満ちた革新的な取り組みなのか、それとも、過去の成功体験に縛られ、変化の波に乗り遅れまいとする、ある種の執着なのか。
レポートは、パンデミックへの備え、感染症対策、そして途上国の医療アクセス改善といった、確かに喫緊の課題に言及している。これらの課題は、国境を越え、我々一人ひとりの生活に直接影響を与える。だからこそ、国際的な協力と大規模な投資が必要であることは論を俟たない。しかし、そのアプローチは、どこか旧態依然としているように感じられるのだ。
例えば、パンデミックへの備えと一口に言っても、その姿は刻々と変化している。未知のウイルスとの戦い、サイバー攻撃による医療インフラの麻痺、そして気候変動がもたらす健康被害。これらは、単にワクチンを開発し、医療物資を供給するという従来の枠組みだけでは対応しきれない。我々が真に必要としているのは、予測不能な未来に対応できる、より柔軟で、より革新的なシステムではないだろうか。
AIやビッグデータの活用、ゲノム編集技術の進歩、そして遠隔医療の普及。これらは、健康問題へのアプローチを根本から変える可能性を秘めている。ITBのレポートは、これらの革新的な技術やアプローチに、どれだけ踏み込んでいるだろうか。もちろん、レポートの性質上、詳細な技術的言及は難しいのかもしれない。しかし、その方向性、つまり、未来の健康をどのように「デザイン」していくのかというビジョンが、もっと明確に示されるべきだったのではないかと考える。
「グローバル・ヘルス」という言葉には、どうしても「国際社会が一体となって取り組むべき課題」という響きが伴う。しかし、その「一体」とは、誰が、どのように、何を目的として「一体」となるのか。単に資金を投入し、既存の枠組みを維持するだけでは、真の「グローバル・ヘルス」は実現しない。むしろ、それは既得権益の温存に繋がり、真に必要としている人々に光が当たらないという皮肉な結果を招きかねない。
我々は、過去の成功体験に囚われることなく、未来を見据えた、真に革新的な「グローバル・ヘルス」のあり方を模索しなければならない。それは、技術革新を恐れず、社会構造の変革をも厭わない、大胆な発想から生まれるはずだ。ITBのレポートは、そのための触媒となり得るのか。あるいは、単なる一過性の情報に終わってしまうのか。未来は、我々の選択にかかっている。
【T&Dアセットマネジメント】「グローバル・ヘルスケア株式ファンド」信託終了のお知らせと今後のご案内,T&Dアセットマネジメント
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