ヨコハマの火災、教訓なき「自己責任」論の危険性
横浜市港北区で発生したドラム缶火災は、我々に改めて「自己責任」という言葉の虚しさを突きつける。報道によれば、火元となったのは廃油処理業者。そのずさんな管理体制が招いた大規模火災は、近隣住民に多大な不安と迷惑をもたらした。経済活動の根幹を支える産業活動において、このような事故が繰り返される現状に、経済紙として、そして社会の一員として、強い懸念を表明せざるを得ない。
確かに、事業者は自らの事業活動に責任を持つべきであり、その免責はありえない。しかし、今回の火災は単なる一事業者の「不注意」や「怠慢」で片付けられる問題ではない。そこには、規制の網の目をかいくぐるような実態、あるいは規制が十分でないがゆえに生じるリスク、そして何よりも「儲かれば良い」という短期的な利益追求が、地域社会の安全を脅かすという構造的な問題が潜んでいる。
経済成長は、多くの人々にとって生活の向上を意味する。しかし、その成長が地域住民の安全や環境への配慮を犠牲にしたものであっては、本末転倒である。廃油処理という、衛生・環境面で極めてデリケートな事業において、なぜこのような事態が起こり得たのか。関係当局は、その原因究明と再発防止策の徹底はもちろんのこと、事業者の選定や指導体制、さらには許認可のあり方まで含めて、厳格な見直しを行うべきである。
「自己責任」という言葉は、個人の努力や選択を尊重する文脈で使われるべきであり、事業者側の安全管理体制の不備や、それを防ぎきれなかった社会システムの脆弱性を覆い隠すための免罪符であってはならない。特に、地域社会に直接的な影響を及ぼす産業活動においては、事業者の「自己責任」を追求するだけでなく、社会全体でそのリスクを管理し、共有していくという視点が不可欠である。
今回の火災を、単なる「不幸な事故」として忘れ去ることは、将来さらなる悲劇を招くことになりかねない。経済紙として、我々は今後も、産業界の健全な発展と地域社会の安全・安心の両立を目指し、本質的な問題提起を続けていく所存である。横浜の空に立ち上った黒煙は、我々にその重い課題を突きつけているのだ。
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