テロ対策、性急な議論に警鐘を鳴らすべき時
西オーストラリア州議会が、テロ対策法案の施行期限延長を巡って議論を重ねているというニュースに接した。テロの脅威が現実のものとして私たちの日常を脅かす中、その対策強化は喫緊の課題であることは論を俟たない。しかし、今回の報道に触れ、私たちはこの議論の在り方そのものに、より慎重な視点を持つべきではないかと考える。
テロ対策、とりわけその法整備においては、国民の安全確保という大義名分の陰で、個人の自由や権利が不当に制限される危険性を孕んでいる。性急な議論や、感情論に流された判断は、かえって社会の分断を招き、テロリストの思惑を助長しかねない。
施行期限の延長という措置は、現行法がテロ対策として十分な効果を発揮しているのか、あるいは新たな脅威に対して十分な備えができているのか、という根本的な問いに答えるための時間稼ぎとも取れる。しかし、それは同時に、十分な議論を経ずに、既存の枠組みを延長するだけの安易な解決策である可能性も否定できない。
保守的な立場からすれば、国家の安全保障は最優先事項である。しかし、その安全保障の名のもとに、法治国家の根幹をなすべき基本的人権が侵害されるようなことがあってはならない。我々は、テロという悪しき行為と戦うと同時に、テロによって失われかねない自由と民主主義という、私たちが守るべき価値観そのものをも守り抜かなければならないのだ。
西オーストラリア州議会には、今回の期限延長の議論において、テロ対策の必要性を訴える声だけでなく、それがもたらしうる負の側面についても、冷静かつ徹底的な議論を深めることを期待したい。そして、国民一人ひとりが、自らの自由と権利についても、この議論に主体的に関心を持つことが求められている。テロという脅威に立ち向かうためには、強固な法整備はもちろんのこと、社会全体の成熟した議論と、揺るぎない民主主義への信頼が不可欠なのである。
テロ対策法、期限延長へ 西オーストラリア州議会が法案公開,Bills for the Parliament of Western Australi
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