グローバル経済における法の支配の灯火を絶やすな
スペインが、米国の要請を受け、国際刑事裁判所（ICC）への協力拒否という前代未聞の事態に踏み切った。このニュースは、単なる一国の外交政策の決定に留まらず、グローバル経済の根幹を揺るがしかねない重大な警鐘として受け止めるべきである。
国際刑事裁判所（ICC）は、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪といった、人類共通の敵とも言える重大な国際犯罪を裁くための、国際社会の良心ともいうべき存在である。その設立と運用は、法の支配を国際社会に浸透させ、紛争の予防と平和の維持に不可欠な要素として、多くの国々によって支持されてきた。
今回、スペインが自国の裁判所が訴追した人物に対するICCへの協力要請を拒否した背景には、米国の強い圧力が存在したことは想像に難くない。しかし、国家間の政治的思惑や利害関係が、普遍的な国際法や人道上の規範を凌駕することを許容するならば、それは国際秩序の崩壊に繋がる危険な兆候である。
グローバル経済は、予測可能性と安定性を基盤としている。国際的なルールや規範が、国家の都合によって容易に捻じ曲げられるようになれば、投資家や企業は安心して経済活動を行うことができなくなる。特に、人権侵害や紛争が頻発する地域への投資は、そのリスクが著しく高まるだろう。これにより、世界経済全体の成長が阻害され、貧困や格差がさらに拡大する可能性も否定できない。
さらに、今回のスペインの決定は、ICCの権威そのものにも深刻な傷をつける。もし、ICCが国際社会における強国の影響力によってその活動を制限されるのであれば、それは紛争犠牲者の正義実現への希望を奪うことになる。その結果、国際法への信頼は失墜し、紛争当事者によるさらなる不正義行為を招く悪循環に陥りかねない。
経済紙として、我々は法の支配、すなわち国際法が遵守され、公正な裁きが行われることの重要性を改めて強調したい。国家は、自国の主権を尊重すると同時に、国際社会の一員としての責任を果たす義務がある。他国の国内司法に介入する権限はないとしても、国際的な刑事司法の枠組みを尊重し、協力することは、グローバル社会の安定と繁栄のために不可欠な責務である。
今回のスペインの決定は、グローバル経済の安定と発展に不可欠な「法の支配」という灯火を、弱めかねない危うさを孕んでいる。各国政府は、短絡的な政治的判断に流されることなく、長期的な視点に立ち、国際法と人道上の規範を守るための揺るぎない意志を示すべきである。国際社会全体が、この問題の重大性を認識し、法の支配という共通の価値観を守り抜くための連帯を強めることが、今こそ求められている。
スペイン、米国による国際刑事裁判所（ICC）への制裁発表に深い遺憾の意を表明,España
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